幕末・維新史の中で、今も歴史ファンの高い人気を誇る新撰組。その副長土方歳三(1835―69年)の側近で、戊辰(ぼしん)戦争最後の舞台・五稜郭(ごりょうかく)=北海道函館市=まで行動を共にした人物に、備中足守藩出身の安富才輔がいる。謎の多い人物の出自と最期が最近、明らかになってきた。 安富才輔(才介、才助とも)は天保10(1839)年の生まれ。元治元(64)年に新撰組に入り、勘定方を務めた。函館では土方側近として、土方が銃弾に倒れた際も同行。東京・日野の土方の実家に〈早き瀬に 力足らぬや 下り鮎〉の句を添えて戦死を告げる書簡を送付。新政府に降伏後の明治3(70)年、東京で暗殺された―。新撰組ファンらに知られる安富像だ。 新撰組でも表舞台に登場せず、出身を熊本藩や鍋島藩とする史料も…。出自さえはっきりしない安富の謎を「彼がいなければ新撰組は戦うこともできなかった。縁の下の重要人物なのに」と追う