「この国はとっくにおしまいですよ。誰もが気づいてるのに誰も何もしようとしない。どうしようもないよ。(中略)こんな国、一度滅んでしまった方がいい。」 『日本沈没』 つい今年のベストには入れ忘れてしまったが、小松左京×一色登希彦の『日本沈没』は2008年を代表する傑作だった。 その内容は30年前に書かれた小松の原作を下敷きにしてはいるものの、骨格から肉付きまで改変されており、実質はほぼ一色のオリジナルといっていいだろう。 日本沈没の時期も70年代から現代に移し変えられていて、「日本列島が沈没すること」は全く新たな意味をもって読者に迫ってくる。 上記はその『日本沈没』の冒頭に出てくる台詞である。破滅的ともいえる内容だが、日本という国がどこか行き詰まってしまったいま、ある種の共感を覚えるひとは少なくないのではないか。 しかし、現実には日本が沈んでしまうことはない。どんなに頽廃しているとしても、ぼく