天ぷらの語源がポルトガル語の「調理」を意味する「tempero」だとされることは、今日では多くの人の知るところであろう。しかし、この天ぷらという料理の起源をたどると、古代ペルシアの「シクバージ」と呼ばれる肉の甘酢煮料理にたどりつくことを、どれほどの日本人が知っているだろうか。本書はスタンフォード大学で言語学とコンピューターサイエンスを教える教授が言語学の観点から、料理にまつわる様々な歴史的事象を面白おかしく、多くのトリビアを織り交ぜながら紐解いていく、一風変わった作品だ。 さて、話を天ぷらに戻そう。ここまで読んで多くの人は、なぜ肉の煮込み料理であるシクバージが揚物になったかという事に疑問を持つであろう。この問題の鍵は酢という食材と船乗りたち、そして中世キリスト教の厳しい戒律にあるという。ササン朝ペルシアの王ホスロー一世の大好物であったシクバージは宮廷料理らしく非常に手の込んだ煮込み料理だ。
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