新しい概念が発見され、社会に浸透していく。社会問題が認知され、解決に向けての議論が進んでいく。セクハラ、ひきこもり、孤独死、介護離職、ブラック企業、リベンジポルノ――。あらゆる社会問題も、最初は名前がついておらず、あくまで個々人の悩みとして処理されていた。そこに言葉が与えられ、苦悩を抱えている者が多数いるということがあぶりだされてきた。 「マタハラ」(マタニティハラスメント)は、最近になって光を当てられ、また急速に議論が進展しつつある社会問題のうちの一つだ。本書の著者である、小酒部さやか氏がその立役者であることは疑いようがない。彼女は「マタハラNet」を組織し、自分自身がマタハラの被害にあったことを訴えると同時に、多くのマタハラ被害者の声を集め、それをメディアや政府に届けている。そうした活動の甲斐あって、二〇一五年は急激にマタハラの認知度が増し、政治的にも大きな一歩を踏み出すこととなった。