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ブックマーク / honz.jp (68)

  • 『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』ある特定の方向へ誘導する教育の問題 - HONZ

    小学校に通う子どもの通知表を見ていたときのことだ。教科ごとに4つの評価項目が設けられているが、「社会」のところに「おや?」と目が留まった。項目がすべて同じ文章になっている。「もしかして誤記?」と思ったのだ。 よくよく見ると同じ文章ではなかった。だが、勘違いするのも無理はない。「我が国の歴史や伝統、世界の国々に〜」「我が国の歴史や伝統の意味について考え〜」など冒頭がすべて同じ文言だったのだから。なにこれ? 2017年、初めて行われた道徳の教科書検定が話題となった。ある教科書に載った教材に文部科学省が意見をつけ、教材に取り上げられた店が「パン屋」から「和菓子屋」に変更されたのだ。 文科省は具体的な差し替え箇所を指示したわけではないというが、教科書全体を通して「我が国や郷土の文化に親しみ、愛着をもつ」点が不足していたと説明している。パン屋よりも和菓子屋のほうが我が国の伝統にかなっているということ

    『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』ある特定の方向へ誘導する教育の問題 - HONZ
  • だれもが楽しめる美しい科学絵本『世界を変えた50人の女性科学者たち』 - HONZ

    ある国際学会で、若手研究者プログラムの責任者を仰せつかったことがある。世界各国から100人程度の優秀な若手研究者が合宿形式で集い、成果を発表する。その中から、5名の優秀者を投票で選んで表彰しようという趣向である。 受賞者の顔ぶれを見て、学会トップで賞のプレゼンターである英国人女性研究者が、いきなり烈火のごとく怒り出した。どうして5名の中に女性が入っていないのかというのだ。正直、驚いた。公正な投票で選んだので、と説明しても怒りはおさまらない。賞金は自腹で出すから女性を一人追加しなさいとまでいう。もちろんそこまで言われたら受け入れざるをえない。5名の予定を6名に増やし、賞金は学会に出してもらった。 グローバルスタンダードはそこまできているのかと、心底驚いた。十年以上も昔の話である。この出来事があって、男女共同参画についての考えが大きく変わった。といえば、聞こえはいいが、ある種のトラウマになった

    だれもが楽しめる美しい科学絵本『世界を変えた50人の女性科学者たち』 - HONZ
  • 遺伝子の差はどれだけの不平等を産んでいるのか『ゲノムで社会の謎を解く――教育・所得格差から人種問題、国家の盛衰まで』 - HONZ

    遺伝子の差はどれだけの不平等を産んでいるのか『ゲノムで社会の謎を解く――教育・所得格差から人種問題、国家の盛衰まで』 双子研究を筆頭に、遺伝子が我々の身体的特徴だけではなくIQや統合失調症などの病気といった数々の要因に深く関連していることがわかってきている。が、そうであるならば遺伝子についての知見を深めることによって政策レベルで活かす──介入したほうがいい人間には介入し、そうでない人間には介入しない──というような形の、オーダーメイド政策はありえるのか。 たとえば、受け継がれた遺伝子的な差異こそが社会的不平等の第一の駆動力なのだろうか。現在の機会均等は主に”勉強ができること”によってもたらされているが、そもそもその能力に生来から違いがあるのだとしたらそれはどれ程の不平等につながっているのか。もしそれが明らかになれば、より適切な平等へ向けて歩み出すことができるかもしれない。これは見方によって

    遺伝子の差はどれだけの不平等を産んでいるのか『ゲノムで社会の謎を解く――教育・所得格差から人種問題、国家の盛衰まで』 - HONZ
  • ゲームと共に生きる。『ゲームライフ――ぼくは黎明期のゲームに大事なことを教わった』 - HONZ

    人生を振り返ってみると、いつもその傍らにはゲームがあった。 プレイヤーの目の前に展開するゲームプログラムは誰にとっても同じものだが、ゲームがもたらす最終生産物は、プレイヤー各々にとって異なる「固有の体験」だ。僕の「初代ポケモン」と、誰かの「初代ポケモン」の思い出は大きく異なる。なにしろ、僕にとってのポケモンは、一緒に分担しながらポケモンを捕まえて、バグ技を共有して喜んだ友人たちの存在なくして語れない。 ゲームはやりすぎると現実を侵してくる。4つ同じ色の物が並んでいたら消えないかなと思うし、『GRAVITY DAZE』をやれば町中を飛び回る自分の姿をイメージし、『アサシンクリード』シリーズをやれば建物をどうやってよじ登ったらいいかを考え始めるようになる。書『ゲームライフ』は、そんなゲームと共に生き、実生活が侵された人間の人生を綴った回顧録である。 ゲームを批評するではないし、ゲーム

    ゲームと共に生きる。『ゲームライフ――ぼくは黎明期のゲームに大事なことを教わった』 - HONZ
    youchan40
    youchan40 2017/10/26
  • 『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』教育の旅紀行 - HONZ

    ロンドンの貧困地区の中等学校で数学を教えていたイギリス人教師が、学校をめぐる旅に出た。OECD(経済協力開発機構)が実施しているPISA(学力到達度調査)で高得点をあげた国々を選び、学校を訪問する。この旅を通じたフィールドワークはユニークなものだ。PISAの成績上位国の学校で働く教師たちのメールアドレスをネットで探し、彼ら・彼女らの学校での手伝いをしながら、その教師たちの自宅に2、3週間滞在させてもらう。こうして、公式のルートで依頼したらあてがわれてしまいそうな「ピカピカの」学校ではないところに入り込む。さらには、教師たちの家族や友人との会話を通じて、「公式見解」とは異なる、その国の教育の実情に迫る。選ばれた国や地域は、シンガポール、上海、日、フィンランド、そしてカナダである。 帰国後、彼女はクラウドファンディングで出資を募り、旅の記録を一冊のにまとめた。それが書『日の15歳はなぜ

    『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』教育の旅紀行 - HONZ
    youchan40
    youchan40 2017/10/08
  • 脳はいかにして現実を認識するのか──『あなたの脳のはなし: 神経科学者が解き明かす意識の謎』 - HONZ

    我々は”現実”をありのまま受け取っているわけではない。いったん視覚情報や触覚情報といった身体表面から情報を受け取り、それを脳で解釈することによってはじめて”人間用に最適化された、人間用の世界”を構築する。我々はある種のフィクションの世界を生きているわけだ。 と、大層な語りだしではじめたけれども、書はそうした現実の解釈機関である脳についての一冊だ。著者のデイヴィッド・イーグルマンは日でも『あなたの知らない脳──意識は傍観者である』で知られる神経科学者で、巧みな文章で脳科学の世界を紹介する伝達者である。書は著者が監修・出演した(世界で人気なのだ)BBCのテレビ番組の書籍版であり、「人はどうやって決断を下すのか」、「人はどうやって現実を認識するのか」など縦横無尽に語ってみせる。 書だけで脳科学が全てわかるわけではないが(そんな事はどんなでも無理だ)、分野の動向を概観し、入り口とするため

    脳はいかにして現実を認識するのか──『あなたの脳のはなし: 神経科学者が解き明かす意識の謎』 - HONZ
  • 『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』 - HONZ

    店頭で「このを読んで見よう」と思わせるのは、まず、装丁だ。表紙が素敵だったりあれっと不思議だったりすると、自然に手が伸びる。僕は、迷わず文の最初の10ページを読む。作者は「読んで欲しい」と思って文から書き始めるはずだから、そこが面白くなければご縁がないなのだ。 書は、最初の小見出し「オキシトシンで愛情が湧く」でノックアウトされてしまった。母親が赤ちゃんをかわいいと思うのは、出産のとき大量に分泌されるオキシトシン・ホルモンのせいなのだ。では父親は?子育てに参加すればするほどオキシトシンが出て、最終的には母親に追いつくのだ。書は脳研究者の子育ての記録だが、最先端の研究成果がふんだんにちりばめられており無類に面白い。 2次元の視覚情報から脳は3次元の世界をいかに理解するか、「三つ子の魂百まで」は当で脳の神経細胞の数は3歳になるまでに70%が死滅する、「二度あることは三度ある」はベイ

    『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』 - HONZ
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    youchan40 2017/10/05
  • 社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ

    『チャヴ』、聞き慣れない言葉である。もとはロマ族の「子供」を指す言葉「チャヴィ」から来た、英国において用いられる「粗野な下流階級」を指す蔑称である。いくつかの英語辞典を調べてみると、「生意気で粗野な態度によって類型化される若年下流階級(オクスフォード英語辞典)」、「教養の欠如や下流階級であることを、その衣服や話し方、行動があらわすような人を示す蔑称。通常は若者を指す。(ケンブリッジ英語辞典)」、「たとえ高価であっても、その趣味が低俗であるとされる若い労働者階級(コービルド英語辞典)」などとある。 さんざんな物言いである。しかし、これらの定義を全部あわせても、チャヴという言葉を正しく理解するには足りないようだ。そこには「公営住宅に住んで暴力的」、「中流階級の謙虚さや上品さがなく、悪趣味で品のないことにばかり金を使う浪費家」、さらには、「暴力、怠惰、十代での妊娠、人種差別、アルコール依存」とい

    社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ
  • 『科学が教える、子育て成功への道』21世紀の成績表 - HONZ

    もし、子育ての成功を定義できるのであれば、成功への道があるのならば、それを知りたいと思う人はたくさんいるはずだ。そして書は、子育てにおいて、科学でわかっていることは何か、何を成功として定義して、その成功のために何をすればいいのか、を学習科学・発達心理学の知見を見事に体系化したである。 「子育て」と「成功」という2つの言葉は相性が微妙で共鳴しづらいが、学習科学と発達心理学の第一人者である2人の著者は明確な意図を持って、この挑発的なタイトルを設定している。その意図とは、知識を詰め込めば成功できるという時代遅れの思考回路から教育現場を開放し、新しい考えを広く伝えようとする強い情熱だ。書籍以外にも、ディズニー、レゴ、子供博物館などのコンサルタントを努め、最新の考え方を浸透させる行動をしている。背景にあるのは、アメリカの惨憺たる教育事情である。 世界各地で叫ばれ続けている教育改革、ビジョンや政策

    『科学が教える、子育て成功への道』21世紀の成績表 - HONZ
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    youchan40 2017/08/27
  • 『水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬』稀代の詐欺師、暗躍の戦争裏史 - HONZ

    昭和14年1月の深夜、霞が関の海軍省の地下の一角では、なにやら怪しげな実験が進行していた。「水からガソリン」をつくるというこの実証実験は、山五十六海軍次官や「特攻の生みの親」ともいわれる大西瀧治郎大佐などの立会いのもと、三日三晩行われ、最終日に成功を収めた。 実験を行っていたのは「街の科学者」として名を馳せていた多維富という初老の男だ。彼は稀代の詐欺師であった。 著者の山一生は石油精製会社に勤務の後、近代史家となり、残された日記から時代を読み解く作品を発表している。阿川弘之『山五十六』(新潮文庫)に書かれた「水からガソリン」事件に興味を持ち、独自の調査を続けてきた。 第一次資料となる文献は防衛省防衛研究所に眠っていた。「水ヲ主体トシ揮発油ヲ製造スルト称スル発明ノ実験ニ関スル顛末報告書」、作成者は大西瀧治郎その人だ。資料は存在しない、記憶にないと国会答弁する役人とは違い、軍人はきちん

    『水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬』稀代の詐欺師、暗躍の戦争裏史 - HONZ
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    youchan40 2017/08/08
  • 『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ

    『世界からバナナがなくなるまえに 糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 バナナがなくなってしまうだって!? 多くの人にとっては寝耳に水であろうが、しかしこの話、けっしてありえないことではないようである。 現在、人々が口にしているバナナは、その大半が単一の品種、すなわちキャベンディッシュバナナである。そしてそのバナナには、遺伝的な多様性がまったくない。というのも、キャベンディッシュは種子がなく、株分け(新芽を移植すること)をとおして栽培されるからである。それゆえ、「キャベンディッシュバナナはすべて遺伝的に同一であり、スーパーで買うバナナのどれもが、隣に並ぶバナナのクローンなのである」。 だがよく知られているように、そうした遺伝的多様性の低い生物は、天敵などの影響をもろに受けやすい。実際、かつて人々が口にしていたバナナ(グロスミッチェル種)は、「

    『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ
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    youchan40 2017/07/25
  • 『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』 「言葉が分かるとはどういうことか」を人工知能から考える - HONZ

    なんという僥倖だろう。この人の新作をこんなにも早く目にすることができるなんて。しかも、今回の作品もこんなにも個性的で、こんなにも心地よいものであるなんて。 ご存知でない方のためにまず説明しておこう。著者の川添愛は、『白と黒のとびら』『精霊の箱』というふたつの作品で熱狂的なファンを生み出した言語学者である。ふたつの作品は、「オートマトンと形式言語」「チューリングマシン」をそれぞれテーマとしていて、それらの基礎を学べる内容となっている。 驚くべきはそのスタイルだ。どちらも、「魔術師に弟子入りした少年が苦難を乗り越えながら成長していく冒険物語」という形をとっているのである。読者は、主人公とともに遺跡を探索し、土人形を討伐しながら、形式言語やチューリングマシンについての理解を深めていく。いうなれば、RPG感覚で学べる入門書。そんながはたしてほかにあっただろうか。 さて、そして今回の『働きたくな

    『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』 「言葉が分かるとはどういうことか」を人工知能から考える - HONZ
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    youchan40 2017/06/17
  • 『マリー・アントワネットの髪結い 王妃の素顔を見た男』王妃に仕えたある男の生涯 - HONZ

    人をどのように評価するかは難しい。人間とは常に多面的かつ多層的な存在だからだ。しかし、私たちが他者を評価する際には、常に人の一面にスポットを当てることで単純な評価を行おうとする。他者にレッテルを貼る事により、一方的でわかりやすい物語を形成するのだ。このような物語を組み立てる事により、人は他者を理解した気になる事ができる。 だが、それで当に人間と言うものを正しく理解できたと言えるのだろうか。特に書の主人公のように極端な側面をいくつも持つ男を一面的に見てしまえば、単なる勧善懲悪の物語に成り下がってしまう。それは人を、そして人が織り成す歴史を正しく理解する事には繋がらないのではないか。 書はマリー・アントワネットの髪結いを勤めていた男レオナール・アレクシス・オーティエという一庶民の伝記である。ルイ16世の時代に女性の間で流行した塔のように高くそびえるプーフという髪型を生み出した男だ。公爵の

    『マリー・アントワネットの髪結い 王妃の素顔を見た男』王妃に仕えたある男の生涯 - HONZ
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    youchan40 2017/06/09
  • 『そろそろ、人工知能の真実を話そう』シンギュラリティ仮説の背後にうごめくもの - HONZ

    『そろそろ、人工知能の真実を話そう』シンギュラリティ仮説の背後にうごめくもの解説 by 西垣 通 2010年代後半に入って、AI(人工知能)ブームの過熱ぶりは凄まじい。とりわけ、 その中核にあるシンギュラリティ(技術的特異点)仮説は、現代のグロテスクな神話と言ってもよいだろう。書『そろそろ、人工知能の真実を話そう』(原題は Le mythe de la Singularité、 2017)は、シンギュラリティが実際に到来するかどうかを冷静に見極めるだけでなく、 その背後にある文化的・宗教的なダイナミックスを、「仮像(pseudomorphose)」という概念にもとづいて容赦なくえぐり出してみせる。きびしい警告の書物である。 だが、著者は決してAI技術自体を否定しているのではない。むしろ、来のAI技術が、 シンギュラリティという怪しげな神

    『そろそろ、人工知能の真実を話そう』シンギュラリティ仮説の背後にうごめくもの - HONZ
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    youchan40 2017/05/27
  • 『バッタを倒しにアフリカへ』ストイックすぎる狂気の博士エッセイ - HONZ

    書店内でいやでも目を引く、虫取り網をかまえこちらを凝視する全身緑色のバッタ男の表紙。キワモノ臭全開の書だが、この著者はれっきとした博士、それも、世界の第一線で活躍する「バッタ博士」である。書はバッタ博士こと前野ウルド浩太郎博士が人生を賭けてバッタのアフリカに乗り込み、そこで繰り広げた死闘を余すことなく綴った渾身の一冊だ。 「死闘」と書くと「また大袈裟な」と思われるかもしれない。だが著者が経験したのは、まぎれもない死闘だ。あやうく地雷の埋まった地帯に足を踏み入れそうになったり、夜中に砂漠の真ん中で迷子になったり、「刺されると死ぬことのある」サソリに実際に刺されたりと、デンジャーのオンパレードである。 なぜ、そこまでの危険を冒さねばならなかったのか。油田を掘り当てるためでも、埋蔵金を発掘するためでもない。そう。すべては「バッタのため」である。 昆虫学者に対する世間のイメージは「虫が好き

    『バッタを倒しにアフリカへ』ストイックすぎる狂気の博士エッセイ - HONZ
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    youchan40 2017/05/26
  • 『消えゆく「限界大学」 私立大学定員割れの構造』差し迫る「2018年問題」、直前対策は? - HONZ

    2020年、東京オリンピックの開催の裏側で、大学入試センター試験の改革が着々と進んでいる。次の中学3年生が高校3年生になるタイミングであるから、もう間近である。高校も大学も塾も、その準備に追われてとても大変になることは想像に難くないが、その手前にも、大きな問題が来ることは随分前から囁かれていた。2018年問題である。 1992年に200万人を超えた18歳人口は、2008年に120万人台まで減り続け、その後横ばいで推移した。その安定期は2018年には終わりを告げる。2016年度の出生数は100万人を切っているため、おおよそ20万人が減ることになる。 これは大学経営に大きな衝撃を与えるだろう。大学進学率が現在の55%前後で変わらず推移すると仮定すれば、大学進学者は10万人以上減ることになり、入学定員500人の大学が200校以上消えてしまう計算なのだ。 事実として、この10年で廃止された大学は1

    『消えゆく「限界大学」 私立大学定員割れの構造』差し迫る「2018年問題」、直前対策は? - HONZ
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    youchan40 2017/03/26
  • 『江戸の乳と子ども いのちをつなぐ』母乳神話は、どのように育まれてきたのか? - HONZ

    22年前、娘を産んだ。が、体つきが細く胸の小さかった私は、母乳がほとんど出ずに悩んでいた。妊娠中から母親学級などで母乳について学ぶのだが、とにかく「母乳にまさる栄養はない、母乳にまさる愛はない」といわれる。しっかり母乳マッサージをして出産に備えましょうということで、まあ随分と強くもまれて、痛かったものだ。 そうやってできる限り準備したつもりでも、母乳はほとんどでなかった。初めて出る母乳=初乳には赤ちゃんを守る免疫が入っているというので、それだけでもと思うのだが、娘の吸う力では足りず、しまいには力一杯両手でしぼって舐めさせた。こんなことでは到底栄養が足りるはずもないので早々に粉ミルクを与えるようになったが、少しでも母乳も飲ませなくてはという強迫観念は胸にこびりついており、まず結構な時間、出もしない乳を吸わせてから哺乳瓶にしていたので授乳には2倍の時間がかかり、やっと終わったと思ったらもう泣か

    『江戸の乳と子ども いのちをつなぐ』母乳神話は、どのように育まれてきたのか? - HONZ
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    youchan40 2017/02/24
  • 『ダメな統計学 悲惨なほど完全なる手引書』で科学の基盤をより確かなものにする - HONZ

    世界は数字であふれている。政治家の支持率から健康品が病気のリスクを下げる確率まで、ニュースや広告を介して、新たな数字が次々とわたしたちに届けられる。しかしながら、その数字がどのようにつくられ、どのような意味を持つのかを真に理解することは容易ではない。特に、数字の送り手に悪意がある場合には注意が必要だ。50年以上前に出版された世界的ベストセラーの『統計でウソをつく法』で知られるように、統計を恣意的に用いれば、多くの人を欺くことはそれほど困難ではないのだ。 それでは、きちんとした科学研究室・大学によって裏付けられたデータならば無条件で信用できるのだろうか。そうではない、と統計学の講師でもある著者のアレックス・ラインハートはいう。科学者たちに悪意があり、統計学を歪めて使用しているわけではない。科学者たちもまた、わたしたち一般市民と同様に統計学をきちんと理解していないというのだ。 科学者は、統計

    『ダメな統計学 悲惨なほど完全なる手引書』で科学の基盤をより確かなものにする - HONZ
    youchan40
    youchan40 2017/02/22
  • 『平安京はいらなかった 古代の夢を喰らう中世』 - HONZ

    冒頭、著者は「日という国に、あのような平安京などいらなかった」と喝破する。「平安京は最初から無用の長物であり、その欠点は時とともに目立つばかりであった」と。「では、なぜ不要な平安京が造られ、なぜ1000年以上も存続したのか」と著者は畳み掛ける。そう挑発されたら、後はもう読むしかないではないか。とても刺激的な1冊だった。 日は、大唐世界帝国の脅威に直面して立国した国である。白村江の戦いに敗れた倭は、明治時代の鹿鳴館政策と同じように、国をあげて背伸びをし、唐と同じ胡服に身を包んで律令国家を目指していく。日という国号、天皇という称号、日書紀という国書、全てが唐に対峙する目的で整備されたといわれている。藤原京、平城京、平安京と続く都も決してその例外ではない。 豪族たちを根拠地から切り離して京に集住させ中央集権体制を速やかに固める必要性にも迫られてはいたが、何よりも、平安京は日の天皇の威信

    『平安京はいらなかった 古代の夢を喰らう中世』 - HONZ
    youchan40
    youchan40 2017/02/04
  • 『あなたの人生の意味 先人に学ぶ「惜しまれる生き方」 』 - HONZ

    夏目漱石に「私の個人主義」という作品がある。これは小説ではなく、大正3年(1914年)11月25日、学習院で行なわれた講演の記録である。代表作というわけでもなく、日頃あまり脚光を浴びることもないが、私は日人全員が読むべき作品と思っている。少なくとも中学か高校の国語の教科書には載せるべきだ。『こころ』よりは絶対に教科書にふさわしい。個人主義というとすぐ、「自分勝手」と同義 に解釈し、「現代は行き過ぎた個人主義の弊害が」などと言う人が多い。しかし、漱石の言葉を読めば、 個人主義は決して自分勝手ではないし、今も決して行き過ぎてなどいないことがよくわかる。 まず漱石は 「自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならない」と言っている。個人主義とは、「自分という個人」の自由と権利が広く認められることではあるが、それは同時に誰もが、「他人という個人」の自由と権利も広

    『あなたの人生の意味 先人に学ぶ「惜しまれる生き方」 』 - HONZ
    youchan40
    youchan40 2017/01/23