とっても軽快なテンポで繰りひろげられる夏子の物語。ここに描かれるのはブルジョアの生娘の純心と気まぐれ。主人公の夏子は、いわゆる典型的なお転婆娘だ。でも、なかなかに爽やかではある。もっとも、夏子に振り回 とっても軽快なテンポで繰りひろげられる夏子の物語。ここに描かれるのはブルジョアの生娘の純心と気まぐれ。主人公の夏子は、いわゆる典型的なお転婆娘だ。でも、なかなかに爽やかではある。もっとも、夏子に振り回される当事者達はたいへんだろうけれど。函館から札幌を経て、千歳近郊へと展開する北海道の風土や空気、光もまた大いにこの作品の形成に寄与している。「あたくし修道院へ入る」と高らかに宣言する夏子。小説の構成も実に見事。こんな三島もあるのだ。三島文学は、実に奥が深い。 …続きを読む
卒業していく君へ。 卒業おめでとう。本当は面と向かって言ったほうが良いのだけど先生という立場だと私の発言が思った以上に重くなってしまうので直接君にはいえない。でも、君への言葉を一度形にしておかないと私の頭に一生こびりつきそうなのでここに書かせてもらうよ。 今年、君は卒論に苦しんだね。君が卒論に苦しんだ理由は自分でも分かっていると思うけど、常に外部に正解を求めたことにあるんだ。私が「どうして、それが正しいと思うの?その理由を教えて。」と聞くと、いつも君は表情を凍らせて黙ってしまったね。何度も何度も「研究には正解とか不正解とかない。誰も答えを知らないから研究になっているんだ。だから、自分の主張をとりあえず述べて、相手の反論が正しいと思えてから自分は間違っていたと考えれば良いんだよ。」と伝えたのだけど、最期最後まで君は自分の主張の正しさを自分の言葉で言えず、常に私の保証を求めたね。はっきり言って
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