PANORAMA STORIES 音楽をめぐる欧州旅「ラフマニノフとルツェルン」 Posted on 2024/02/19 中村ゆかり クラシック音楽評論/音楽プロデューサー ドイツ、エッセン ロシアの音楽家、ラフマニノフの代表曲の一つに《パガニーニの主題による狂詩曲》がある。 そのロマンティックな第18変奏は、きっと誰もが耳にしたことがあるはず。 短い序奏のあと、あのメロディが聴こえると、 まるで綿菓子を口に入れた瞬間のように、心に音楽がすっと溶け出して、 身体中が甘さと幸福感に満たされていく。 実はこの作品、彼が「最高の部屋」と呼んだある書斎から生まれた。 いや、実際には書斎が作品を生んだと言って良いのかもしれない。 なにしろラフマニノフは、完璧すぎる部屋を作った自分のわがままへの罪滅ぼしとして、 この作品を書いたと言っているからだ。