広瀬隆については従来から毀誉褒貶が甚だしく、そのことが広瀬隆への警戒感や抵抗感となって、著作への接近を躊躇させていた。そういう人は私以外にも結構多くいるに違いない。今回の原発事故が機会となり、私は初めて広瀬隆の本を読んだが、一読した感想は、世間一般やネットで言われている評価とは全く異なるもので、印象を新たにさせられた。事故があり、エネルギー問題について否応なく強い関心を持たざるを得ない時期だからという条件もあるが、本の内容は面白く、論理と主張に引き込まれ、そのまま最後まで一気に読み切った。正直なところ、私の場合、途中で挫折せず最後まで読み通せる本は少ない。柄谷行人も、まず何より読み込めるかどうかだと言っていて、私もその読書論に同感する一人だ。今回、広瀬隆という作家が、これまで市場で人気を博してきた理由がよく納得できた。と同時に、何であのような、荒唐無稽と決めつけられる異端像が定着してきたの