旅先で、この先2度と会わないだろう相手の話に合わせて別人を演じるのは楽しい。 人と見知っていくのは苦手だけど、見知らぬ誰かと相席になるのは苦にならない。 繋がらない電話番号と住所をそらで言えたのは、しつこい勧誘に対して役に立ちました。
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サキちゃんは小さいころから嘘つきでした。妹と口裏を合わせて凝った嘘をつくので、近所の人々から「あの嘘つき姉妹」と呼ばれていました。 嘘つきには、自分がついた嘘を嘘だとわかっている嘘つきと、自分がついた嘘をそのうちほんとうだと思いこむ嘘つきがいます。サキちゃんは後者でした。完全にほんとうだと思いこむと嘘がばれないように操作することができません。サキちゃんはそのさじ加減が絶妙でした。嘘を嘘と自覚しながら意識の中ではほんとうと思い込む。サキちゃんはそういうタイプの嘘つきでした。 サキちゃんの妹はやがて、それほど派手な嘘をつかなくなりました。姉妹が中学生のときのことでした。嘘つき姉妹は解散し、嘘つきサキちゃんだけが残りました。サキちゃんは妹を軽蔑しました。正直になった妹は地味で、ださい連中と一緒にいて、いつだってキラキラのすてきなグループにいたサキちゃんとは格が違っていたからです。 サキちゃんは大
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