A群連鎖球菌のイラスト。壊死性筋膜炎の原因として最も一般的な細菌だ。(ILLUSTRATION BY CDC) 2017年8月に米国テキサス州をハリケーン「ハービー」が襲い、ヒューストンの街は洪水により甚大な被害を受けた。その濁った水の中に、誰知るともなく危険な生きものが潜んでいた。目には見えないその生物は、浸水した自宅で転倒し、腕を骨折した77歳のナンシー・リードさんを攻撃した。(参考記事:「大型ハリケーン「ハービー」被害の記録 写真29点」) ほどなくリードさんは亡くなった。犯人はいわゆる「人食いバクテリア」である。強力に進化した菌がリードさんの皮下組織に侵入し、筋膜と呼ばれる組織に感染し、まるでハリケーンのように行く手にあるもの全てをみるみるうちに破壊したのだ。 人食いバクテリアという呼び名は、厳密には正しくない。細菌は人の肉を食らうのではなく、毒素を出して、それが組織を液状化させる