FujiSankei Business iより「【日本の未来を考える】東京大・大学院教授 伊藤元重 「貨幣錯覚」に陥るなかれ」 為替レートの動向に注目が集まっている。最近になって1ドル=80円台まで円高が進む中で、経済界などにも円高警戒論が出てきているようだ。 為替レートが経済の実体に及ぼす影響は大きいので、経済界などが円高を気にすることはよく分かるが、いろいろなお話を伺っていると多くの人が「貨幣錯覚」に陥っているように思えてならない。 大学で経済学を教えるときは、名目為替レートと実質為替レートをきちっと区別すべきことを強調する。 円ドルレートで言えば、今の1ドル=89円と1995年のそれとはまったく意味が違うのだ。 この間、日本はデフレなどもあったので物価はほとんど変化していない。 しかし米国では穏やかな物価上昇が続いたので、2008年の消費者物価は95年のおおよそ1・4倍になっている。