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ゆっくり読みたいに関するamenomorinoのブックマーク (18)

  • 春 - ビグルモワ

    生ぬるい日だった。冬からのトンネルをぽかりと抜けて、地上に顔を出したみたいな陽気だった。天気予報が雨は降るような降らないような曖昧なことを伝えたが、裏腹に雲からは日射しが覗き込んでいた。曇りの日の日光は晴れの日よりも尊いように思える。「天使のはしご」とよぶのだと、いつか遠い原っぱで教えてもらったことがある。厚い雲から伸びる光の線は気高く意味ありげにみえた。その一方で暗い雲は意地悪で今日を憎んでいるようだった。 こんな日ははじめてではなく、いつかもこんな天気だった。思い出す。これはテレビ映画の話だが、女の人がいて、かの女は幼いころ親にいじめられていた。悲しんだり自分を傷つけたりするうちにどうにか大人になった。両親はとっくに病気で死んでいて、女は過去に悩まされた。ある日、夢を自由にできる能力が身につき、夢ではあるが自分の過去に介入することができた。夢の中ではすべてが可能で、それでかの女はかつ

    春 - ビグルモワ
  • 初恋の呪い―『ローラ』(ジャック・ドゥミ) - Devil's Own

    Lola/1961/FR 『ローラ』はジャック・ドゥミ監督の長編第1作だ。ドゥミと聞くと『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』に代表されるめまいがするような色彩感覚と甘いメロディーに彩られたミュージカル映画を思い起こす人も多いとおもう。『ローラ』はモノクロ映画でミュージカルでもないが、港町、水夫、シングルマザー、踊り子などドゥミ作品における主要なモチーフは、ほぼすべてそろっている。今でこそ国内でソフト化され、上映される機会も増えたが、完成から長い間日で『ローラ』を見るチャンスはごく限られていた。「ヌーヴェルヴァーグの真珠」と評したジャン=ピエール・メルヴィルをはじめ、名だたる映画作家が贈る賛辞を聞いては、想像し、恋い焦がれるほかない「夢のフィルム」だった。日での初公開は1992年だが、当時7歳の私はもちろん見ていない。 私が初めて『ローラ』を見たのは2007年3月20日。

    初恋の呪い―『ローラ』(ジャック・ドゥミ) - Devil's Own
  • 文体? - ビグルモワ

    少し前から小島信夫の話をしている。 文体 - 意味をあたえる イニシャルがAとZなのがいいですね。 これまでに小島信夫の話をしたことはほとんどない。文学の先生に話して、「第三の新人!」と言われたくらいだ。教科書的知識。母親と同居人にも言ってみたが、どちらもピンときていなかった。たいして詳しいとも思えないのだけれど、こういうことでもなければなにも言わなかったことだろうし、なんだかチャンスのような気がするから、書いてみることにする。 当該記事でわたしのことも少しだけふれられていて、そんなことはめったにないので少し緊張する。小島の作にあやかって、保坂和志もこんな気分だったのかしらと考えてしまう。きっと違うだろうね。 小島信夫を読もうと思ったのは、好きな作家がその著作でふれていたからで、そこでは何作分も感想が書いてあったし、保坂和志とのやりとりのこともふれてあったのでとても幸運だった。かゆいところ

    文体? - ビグルモワ
  • 自選作品 - 美の特攻隊

    過去作品をふりかえってみました。

    自選作品 - 美の特攻隊
  • 2014年『バンビのあくび』のおすすめエントリ。 - バンビのあくび

    みなさま、ごきげんようー。 のべらっくすの文章を締め切りまでに書き終えホッとし、ブログを巡回しておりましたら「今年1年の自分のブログを振り返りおすすめせよ!」と言う指令があっちの方からぴろろろーんと糸電話で伝わってきたので私もやってみたいと思います。 私のブログはブクマ数で言うと子どもや絵のエントリが多いのですが、子どもの事はこんなことがあったよーと言う事例的なことでそれ以上でもそれ以下でもないんです。絵についてはとにかく好きだから書いていると言うのが先立つので、今回はできるだけ子どもの事と絵の事は除いて10コ選んでみました。ここにあげた以外にもバレーボール関係は読んでほしいですけど、がっつり連載なので除きました。 では、おヒマな時に読んでもらえると嬉しいです。そんで、これが私なんです☆ *** 『遠き夏の日』と『遠き夏の日のあと』は前後編になるので1つでカウントして下さい。えへ。

  • ベストオブnerumaeログ6選+短歌10.2選2014 - nerumae

    まとめをつくるほど大したブログ書いてないんですが自薦集2014作りました。俺の歌を聴け!ってやつですね。 ・6エントリ+短歌10+2 ・ブクマ、スターの多寡よりも私の輪郭がより出てるもの、個人的に思い入れが強いものを選抜しました ・読まなくても大体わかるように解説入れてます 俺の歌を聴け6選 1, ベストオブnerumae 自分ではグヒグヒ笑いながら脳内物質ゴリゴリだして書いたんですけど、あまり他の方には面白くなかったようでイマイチ盛り上がりませんでした。筆力不足無念。 この「ぬるんちょ」は自分が従事してる作業内容をなんとか身バレせずに、でもこの疲労でちょっと狂った感じとクソさと悪夢みたいな不条理感だけをなんとか伝えられないか!sucks !!と試みた結果です。 あと直近で読んだ川上弘美さんのこの小説収録「mundas」の凄まじさにも相当影響受けてると思う。*1 なめらかで熱くて甘苦しくて

    ベストオブnerumaeログ6選+短歌10.2選2014 - nerumae
  • そんな日もある。

    2014-07-20 花と星 土竜の死骸を見たことがある。私は六歳で、ラジオ体操の帰り道だった。遠くの山で蝉が鳴きはじめていた。実物を見たのははじめてだったけれど、絵に描かれた姿と同じだったから、それが土竜だということはすぐにわかった。 舗装された道の端で、腹から血を流して死んでいる土竜の体には既に蟻がたかりはじめていた。 大人になってから「地上で発見される土竜の死骸の多くは土の中で仲間内の争いに敗れ、餓死したものである」というようなことをで読んだが、その時の私は「きっと太陽が眩しくて死んだのだ」と思い、それなのに陽光に晒されて凝としている姿がひたすらかなしく、土に埋めてやりたいと思ったけれども、どうしてもその死骸に触れることができなかった。 傍らに咲いていた露草や、名前を知らない花を摘んだ。供花のつもりで。土竜の体は存外大きくて、両手一杯摘んだ花でも太陽から覆い隠してやることは

  • やわらかく - 一日

    2014-09-11 やわらかく 公園の砂場で遊んでいるときに、これなあに、と子どもがつまみ上げたものは死んだ雀で、この子は普段虫にも触れないのに雀の死骸には触るのかと驚いてそれから、ああそうかまだ死がなんなのかよくわかっていないのかもしれないなとも思い、埋めてあげようねと言いました。 躑躅の木のしたに穴を掘るあいだ、神妙な顔で手を合わせていたところをみるとわかっているようでもあり、土をかけながら「雀さん元気になる?」と尋ねてくるところをみるとやっぱりわかっていないようで、元気にならないよ身体がだんだん腐っていって骨だけになるんだよ、と答えるとまた両手を合わせていました。手のひらにのせた雀のやわらかくたよりない軽さを思い出しながら、爪に入りこんだ土を気にしながら、あの躑躅は春には何色の花が咲くのだろうかとどうでもよいことを考えながら家に帰る途中、子どもがまた「雀はどうなるの?」と尋ねるの

    amenomorino
    amenomorino 2014/09/11
    ひょこっと出ることも、ずっと出ないことも。
  • 百色眼鏡 - 一日

    2014-09-03 百色眼鏡 万華鏡はむかしは百色眼鏡と呼ばれていたのだそうで 言わんとすることはよくわかります 百色眼鏡 きれいな名前万華鏡の良いところはきらきら色とりどりの世界を鞄に入れて持ちはこべることで、悪いところは隣にいる人と一緒に同じ世界を見られないことずっと昔に父がどこかのお土産で買ってきた万華鏡は赤い千代紙の貼ってある玩具で いつまでもいつまでも見ていて母に叱られました万華鏡とかオルゴールとか蝶のかたちの指輪とか、こどもの頃わたしのまわりにあった美しいものはすべて父の手からもたらされたものでした、うるさい馬鹿としか言わない乱暴な人だったのにね 旅先で万華鏡を買い求める父の姿を想像したら、少し泣けてきました 今頃になって百色眼鏡 カレイドスコープ 万華鏡さっき見た世界は、少し筒を傾けただけでもう別な世界になります どれもそれぞれ、きれいです haruna0

    百色眼鏡 - 一日
  • バランス - 一日

    2014-08-28 バランス 世界と聞いてわたしが思い浮かべるのはいつでも大きな天秤の皿の上で、わたしたちはいつもそこでべたり働いたり眠ったりしている。もういっぽうの皿の上にも同じような世界があって、そこではまた別な人たちが眠ったり働いたりべたりしたりしている。この世における幸福の総量は決まっていて、誰かが笑えば誰かが泣くというのは映画の台詞だったか小説の一文だったかもう忘れてしまったけれども、わたしもそんな風な考えの持ち主で、だからかなしいことがあると天秤を思い浮かべるのかもしれない。今どこかで誰かにはうれしいことがおこっているのかもしれないと。それで心が慰められるほどにお人よしではないけれども。そう考えてみると幸福をひとりじめしているように見えるあのひともあのひとも、一生という単位で見ると受けとる幸福の量はその他のひとと大して変わらないのかもしれない。良いことと悪いことはたいてい

  • あめふり - 一日

    2014-08-23 あめふり めざめたときから雨ふりの土曜日は、生ま れて三年のひとには退屈極まりないようで 絵もあらかた読みつくし、怪獣になって ふとんの山を破壊してもまだ疲れを見せず 外に行きたがるのをなんとか宥めてお昼寝 に誘いますおなかにタオルケットをかけて目を閉じる よう促しても、三歳のひとは少しも眠たく ならぬらしく、お話してしてとねだるので しかたなく枕の上に指を二置いてお話の はじまりです 左手の、中指が左足で人差し指が右足の小 さなひとはどこにでも行けるのです 月の上を歩いたり南の島の王さまに拝謁し たり虹をべたり亀と戦ったりするのですやわらかく降る雨の音はざあざあではなく さあさあと聞こえます さあさあ寝なさい、お話はそのぐらいにね そんな風に隣の部屋から見ていた三歳のひとの父親は よくそんな口からでまかせを次々に言える なあ

    amenomorino
    amenomorino 2014/08/24
    読みたい時いつでもすぐ読めるように持ち歩きたいです。
  • タイトロープ - 一日

    2014-08-20 タイトロープ 結婚をするということはもうあなたの戻る場所は無いということだからあれもこれも捨てていって頂戴と、家のひとが言ったことばはお願いの色でありながら完全な命令のかたちをしていて、しかたないなあと思いながらも、やっぱり写真や手紙や人形を捨てるのはつらかったです。 結婚する相手のひとにも、お前はここで新しい暮らしをはじめるのだからあれこれ昔のものを持ってくるんじゃないと言い聞かされて、それでもせめてお小遣いを貯めて買ったの数々はと思っていたのに二、三日留守にしているあいだになくなっていました。スカーレット・オハラも明智小五郎もヒースクリフもみんなどこかへ行ってしまいました。戻る場所は無いと言われましたし、それでも今いる場所ではあなたは余所から来たひとと呼ばれますし、いまの暮らしに満足しているつもりでもちょっとしたことで涙が出たりして、いつもぐらぐらしているから

  • 20140812 - ←ズイショ→

    昨日の夜もなんかこう、自分の書く"型"みたいなもんが身についてくると自由に書けるかと思いきや逆に書くこと偏ってくるよねみたいな話をしてたんですけど、あーあれそういう話だったんだ、後半ずっとおちんちん弾いてただけだったじゃねえかって感じなんですけど。「文体を獲得した!」とか息巻いた直後にめっちゃしょうもないこと言ったら面白いんじゃないかなと思って軽い気持ちでおちんちんって言ったんですけど、結局その後最後までおちんちん言うてたもんね。ひどいね。そういう喋りやすい話、喋りにくい話っていうのが多分人それぞれあって、今日はちょっと苦手な方の話をしようかなと思う。死んでやっと話題にするっていうのも現金な話だなーと思うんですけれどもロビン・ウィリアムズがお亡くなりになられまして。 単純に普段ズイショさんあんま人物にクローズアップした話をしないよねみたいな自覚はあるんですけれども基的に僕はこんな感じのお

    20140812 - ←ズイショ→
  • まわる - 一日

    2014-08-07 まわる 「HEP FIVEは大阪梅田の複合施設、ビルの屋上の赤い観覧車が目印」と観光用のガイドブックを読み上げると、その人は今から乗りにいこうと言って私の返事を待たずにせかせか歩いて行ってしまった。まぁあんなもん観光客しか乗らないけどね、と馬鹿にしたように言うからわざと「私ハ観光客デスカラ」と平板な声で答えてやると困った顔をする。数歩あとをついて行きながらヘップファイブってへんな名前、ヘップだってヘップゥ、と殊更にふざけながら何度も言った。あと数時間後には私は新幹線で博多まで帰るから、なにかしら喋っていないとたぶん泣く。 友だちだった頃には近くにいたのに恋人になった途端に住まいが離れてしまうというのは、もしかしたらご縁が無いのかもね。なんてことは話せないし、だからやっぱりヘップヘップとふざけながら歩いていく。HEP FIVEは名前もへんだし、遠くから見るとビルとビル

  • ロイヤル・ストレート・フラッシュ - 一日

    2014-08-03 ロイヤル・ストレート・フラッシュ 十五歳のわたしから手紙を貰いました。トランプの箱の中に、ちいさく小さく折り畳まれて、枯れ枝みたいな字で、しあわせですか、と書いてありました。 トランプは伯父さんがくれたもので、なぜだかスペードのエースとハートのクイーンと、ダイヤの10がありません。 人生はポーカーと一緒、手持ちのカードで勝負するしかないんですよ、君。と伯父さんは言っていたから、美人じゃなくて賢くなくて基礎体力も無くて人見知りで、おどおど卑屈な態度が不快だという理由でときどき大人のひとに殴られるわたしは、きっと人生ゲームには勝てないと絶望して、へなへなした字で「しあわせですか」と書いたのでしょうか。ちょっとかなしくなりながらその手紙を捨てました。十五歳のわたし、あなたの人生にはこれから阿呆程いやなことがおこります。お金は持ってません。見違えるように美しくもなりませ

    amenomorino
    amenomorino 2014/08/03
    小さいけれど確かな幸せ、小確幸という言葉を思い出した。人のカードと比べる必要もなく、そういうものを積んでいけたら本当に人生は捨てたものじゃないですね。
  • 病室 - そんな日もある。

    2014-07-30 病室 グレープフルーツは匙で掬ってべるよりも皮を剥いてひと房ずつべるのが好きだと言うので、利き腕にギブスをしたその人のかわりに剥いてあげたら、その人はとても喜んでありがとうやさしいねと何度も言いました入院三日目に誰かが持ってきたというくだものの盛り合わせの籠を指さして好きなのをべていいよと言われたけれども、わたしはその人の前だと緊張してしまってものがべられないのです わたしにとっては「ともだち」と「あこがれの人」のあいだぐらいのその人が入院したと聞いてからお見舞いに行こうと決意するまで三日も悩んだし、昨日の夜には会ったら何を話そうかと頭の中で喋ることのリストまでつくったほどでした その人はくだものの籠を眺めながら、メロンは大好き、マンゴーはまあまあ好き、キウイは別にふつう、と選り好みしてからふいに「でもこれを持ってきた人は嫌い」と呟いたから、わたしはびっく

  • 荒野 - そんな日もある。

    2014-07-25 荒野 前から思ってたけど無頼派ってそんなに無頼でもないよねだって結婚してたりするし、しかもお見合い結婚とかでなかなかに堅実、と堕落論を読んでいる私の顔を覗きこんで言ってきたその人には親もきょうだいもも子もなかった。 無頼というのは私生活ではなくて作風のことではないのですかと答えた時にはもう背を向けてすたすた歩き去ってしまっていてなんだか、 へんな人 だと思った。 私のともだちはその人を飄々としている、と言い、また別なともだちは、あの人のまわりだけ風がスウスウ吹いている気がする、と言った。 大勢で集まっている時でも、ひとりで荒野に立っているような感じがする人だと、私なんかはそう思っていた。にこにこして来る者拒まずみたいな雰囲気を醸し出しているくせに、来た者に常に一定の距離をとりつづけるようなところもあってなんだか、 むずかしい人 だとも思っていた。 シ

  • 花と星 - そんな日もある。

    2014-07-20 花と星 土竜の死骸を見たことがある。私は六歳で、ラジオ体操の帰り道だった。遠くの山で蝉が鳴きはじめていた。実物を見たのははじめてだったけれど、絵に描かれた姿と同じだったから、それが土竜だということはすぐにわかった。 舗装された道の端で、腹から血を流して死んでいる土竜の体には既に蟻がたかりはじめていた。 大人になってから「地上で発見される土竜の死骸の多くは土の中で仲間内の争いに敗れ、餓死したものである」というようなことをで読んだが、その時の私は「きっと太陽が眩しくて死んだのだ」と思い、それなのに陽光に晒されて凝としている姿がひたすらかなしく、土に埋めてやりたいと思ったけれども、どうしてもその死骸に触れることができなかった。 傍らに咲いていた露草や、名前を知らない花を摘んだ。供花のつもりで。土竜の体は存外大きくて、両手一杯摘んだ花でも太陽から覆い隠してやることは

    amenomorino
    amenomorino 2014/07/21
    子供の頃話せなかったこと、子供が私に話せなかったかもしれないことを思った。子供はある日突然年齢とかで大人になるんじゃなくて、こうして少しずつ大人になっていくのかもしれないということも。
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