始めてその場所に来た僕は右も左もわからず、ただ周りに圧倒されるばかりだった。 大勢の人がそこにはいたし様々な会話が飛び交っていたが、僕は参加できず独り言をつぶやくばかり。 定型的な、たとえば挨拶だとか、そういうことはしていたが、特に親しい人はいなかったし、いつも孤独でいつ逃げだそうかとも思っていた。 そんなある日、彼女は僕に話しかけてくれた。 考えてみればその場所でまともに話をしたのは、彼女が始めてかもしれない。 きっかけは些細なこと。 今日はなにを食べたとか、好きな映画の話とか。そう、とても些細な会話だったのかもしれない。 しかし、孤独だった頃の僕には、彼女はそう、まるで女神のようだった。 彼女と話すようになってから、そこでの友人は増えた。 僕は水を得た魚のようにいろんな人と話をした。有名人にも会えた。技術的な話で夜を明かしたこともあったし、時にはふざけあって周囲に怒られた時もあった。