この作品を書くきっかけになったのは、娘の通う公立学校でのボランティアだった。 日本での公立学校生活をあまり楽しんだとはいえない私は、住んでいるマサチューセッツ州の町立公立学校に対して殆ど期待はしていなかった。いくら教育で有名な町であっても、日本よりは教育程度は劣っているであろうし、虐めだってあるだろうと決めつけていた。だから、学校の教室に入り込んで直接教師や同級生を監視できるボランティアを希望したのである。 まず私が驚いたのは、小学校での虐めがないことであった。これは、私自身の観察のみならず、小学生、中学生、高校生を取材して確認したことである。次に私の先入観を覆したのは、学問的達成度である。小学校ではまったくといってよいほど詰め込み教育をしないのに、多くの生徒が中学校ですでに日本の大学生と同程度の論文を書き始め、世界史と国際政治に関しては日本の大学生よりも詳しく、数学でも中学校で日本の高校