「裁判官は優秀で、孤高を貫く人間の集まり」と思っている人が多いが、それは現実とは違う。「上からの評価」を気にして、人事に翻弄されるという点では、サラリーマンと何ら変わらないのである。 「憲法記念日を迎えるに当たって」、第18代最高裁長官の寺田逸郎は、「『法の支配』を実現することを不変の使命とする」と説いた。しかし皮肉なことに、裁判官の人事制度ほど、「法の支配」から遠ざけられたものはない。 裁判官は、行政官僚やサラリーマンと違って、意に沿わない人事異動には応じなくていいと法律に明記されている(裁判所法48条)。にもかかわらず、大半の裁判官は、命じられるまま全国各地の裁判所へ赴任していく。組織の論理が、彼らの権利より上位にあるからだ。 裁判所は、全国に520ヵ所配置されている。東京、大阪、名古屋など8つのブロックに、それぞれ高等裁判所を置き、その下に地方裁判所と家庭裁判所が連なる構造だ。 ここ