中国北東部の遼寧省大連にある、スターウッドホテル&リゾートチェーンの「ザ・キャッスル・ホテル」(2014年7月7日撮影)。(c)AFP/JOHANNES EISELE〔AFPBB News〕 ウェスティンやシェラトンといったブランドを傘下に持つ米国のホテルグループ、スターウッドのトム・マンガス最高経営責任者(CEO)はこの3月末に、従業員に向けてこう書いた。 同じ米国のホテル運営会社マリオットと、中国の保険会社・安邦保険集団の率いるグループとによる買収合戦に言及したコメントだった。 安邦保険側は先に買収価格を140億ドルに引き上げた(訳注:この記事が出た後、安邦保険は買収提案を取り下げ、買収交渉から撤退した)。マンガス氏がこのとき、世界経済を席巻している中国主導のM&A(企業の合併・買収)の大波について語っていたとしてもおかしくなかった。 * * * * 外国での経験がほとんどない一
3月20日、中国人民銀行の周小川総裁は北京で開催された国際フォーラムで改めて国内外の投資家の不安払拭を図った。 2月の外貨準備高の減少ペース(286億ドル減)は、たしかに1月(995億ドル減)と比べると鈍化していた。また、人民元の対ドルレートが安定を取り戻しつつあるとの観測も出始めていた。 危機的状況の中、トービン税導入案を検討 だが、3月末に人民銀行が商業銀行との間の「先物・先渡し(デリバテイブ)取引」における外国通貨の売り持ち高を公表した(289億ドル相当)ところ、人民銀行の2月の為替介入の規模が市場の予想に比べてはるかに大規模だったことが判明した(4月1日付ブルームバーグ)。 デリバテイブ取引では、相手先(商業銀行)に米ドルの現金を渡すのが数カ月先の契約満期を迎えてからになる。その間、人民銀行は米ドルを温存し、外貨準備を減らさずに済むというメリットがある。しかし人民銀行が結んだ契約の
(北京より) 最近まとまった中国の第13回5カ年計画は、2016年から2020年の期間に向けた中国の経済戦略と抱負を明確に打ち出している。とりわけ、GDP(国内総生産)と平均世帯収入(都市部および農村部)を2010年に比べて倍増させるというのが、5カ年計画の目的のうちの重要なものだ。 こういった目標を達成するためは、中国経済はこれから5年間、少なくとも毎年6.5%以上の成長をしなければならない。このペースは1979年から中国が記録してきた9.7%の成長ペースに比べたらかなりゆっくりであるものの、それでも国際的な水準からすると紛れもなく速いペースだ。 そして、中国の成長が2010年初めから毎四半期ごとに減速しているという事実を考慮するに、この目標は達成可能なのかと疑問に思う者もある。 しかし私は達成可能だと考えている。 * * * * 経済成長は、技術の進歩と産業の整備による労働生産性
中国・北京の人民大会堂にはためく中国国旗(2012年11月13日撮影)。(c)AFP/Mark RALSTON〔 AFPBB News 〕 中国が試みている経済的な移行は、中国自身のみならず世界のほかの国々にも大きな影響を及ぼす。短期的には、中国の経済活動の急減速かもしれない現象からの波及を管理することが課題になる。長期的には、中国という金融大国の世界経済への統合にいかに対処するかが課題になる。だが実際には、短期的な出来事が長期的に何が起こるかも決めることになるだろう。 インドがまとめた最新の「エコノミック・サーベイ」には、示唆に富んだ危機の分類法が提示されている。 これによれば、危機が外国にもたらす衝撃は、1)その危機はシステム上重要な国で起こっているのかどうか、2)政府の借り入れの結果なのか、それとも民間の借り入れの結果なのか、3)危機が発生した国の通貨は上昇しているのか、それとも下落
上海で終わったはずの住宅バブルが再燃している。2015年春以降、住宅市場が息を吹き返し、今年に入ってどんどん価格を上げているのだ。「いまだかつてないバブルだ」(地元紙)との声も聞こえてくる。 「中国ではもう住宅バブルはないだろうと思っていました。また、こんなことになるなんて信じられない」 こう語るのは上海在住の会社員だ。 上海では誰もが「住宅価格は天井に達した」と思っていた。しかし昨年(2015年)、住宅価格が再び上昇局面に入る。上海で販売された住宅面積(新築・中古含む)は前年比55%増の1500万平米。1平米当たりの平均価格も3万元(1元=17.5円として約52万5000円)を超えてしまった(「捜房網」による統計)。 慌てて値段を書き直す不動産仲介業者 上海市の西、虹橋空港に近い古北新区では、築20年近いマンション群が急騰した。1990年代に外国人向けに開発された区画である。
世界の原油約3分の1の輸送航路となっている南シナ海の西沙諸島・永興島に中国が新設した三沙市(2012年7月27日撮影、資料写真)。(c)AFP〔AFPBB News〕 2016年2月の中国の原油輸入量は前年比19%増の3180万トンとなり昨年12月に次ぐ高い水準となった。全体の輸入額が前年比14%減と大幅に落ち込んだにもかかわらず、である。 その大きな要因として、原油価格下落により民間製油企業がロシアからの輸入を増大させたことが挙げられる。加えて、筆者は国内で生産される原油量が減少していることが影響しているのでないかと考えている。 「延長油田」「勝利油田」で生産を削減 2月半ばから、中国メデイアはこぞって「原油価格下落で国有石油各社の油田が大きくコスト割れし、操業を相次いで停止している」と報じていた。 例えば2月22日付「証券日報」によれば、陝西省にある「延長油田」では開発の一部を断念する
今年の全人代の中心課題は経済改革と景気対策である。李克強首相は政府活動報告のなかでゾンビ企業を整理、統合するとの決意を表明した。 中原地方と呼ばれる河南省と山西省は、歴史的に炭鉱が密集する地方である。昨今の石炭の需要減少と価格低下によってこれらの炭鉱の多くは経営を続けられなくなった。また地方政府は不動産バブルに便乗して各地に小さな製鉄所を設立したが、鉄鋼価格の急落を受けて経営難に陥っている。こうした炭鉱や製鉄所は経営的には存続が難しいが、大量の雇用と生産設備を抱えているため閉鎖することができない。 2016年の全人代の目玉の1つは、こうしたゾンビ企業の整理、統合である。中国政府が過剰設備の削減に本気で取り組むことを決意したのだ。政府は、鉄鋼と石炭関連のゾンビ企業の閉鎖によって失業すると見られる約180万人の手当として1000億元(約1兆7500億円)を用意すると表明した。
コロンビア国境のベネズエラ・スリア(Zulia)州マラカイボ(Maracaibo)湖の石油掘削施設(2010年10月27日撮影)。(c)AFP/Juan BARRETO〔AFPBB News〕 米ドル建ての借り入れが発展途上国の景気循環にとって重要な理由 原油価格は若干上向いたが、石油生産会社は昨年の原油価格急落の影響をまだ引きずっている。 メキシコの国有石油会社「ペメックス」のトップは先日、同社が「流動性逼迫」に直面していると述べた。マレーシアの国営石油会社は従業員のレイオフを進めている。 困難に直面しているブラジルの巨大石油会社「ペトロブラス」は、先日、中国国家開発銀行から100億ドルの融資を受けた。近々期日を迎える債務の返済原資の一部に充てるためである。 こうした石油会社の苦境は、新興国企業の債務負担に大きな懸念があることを示している。資源の生産会社にとって特に心配なのは、ドルが今よ
仏パリで開幕した国際農業見本市の会場で、オランド大統領が来訪した日に、抗議する人々に破壊された農務省のブース(2016年2月27日撮影)。(c)AFP/JOEL SAGET〔AFPBB News〕 パリから車で30分も走ると、緑色の鮮やかな田園風景が目の前に広がる。「グルメ大国」フランスを支えているのが、豊富で新鮮な食材を提供できる自給自足100%の農業だ。 だが、そのフランスの農業が危機に見舞われている。 国を挙げて開催する「農業見本市」 「農業見本市」(正式名は「農業国際見本市:Salon international de l’agriculture」)を訪問したフランソワ・オランド大統領は農業従事者たちから激しいブーイングを受け、再選の可能性が限りなくゼロに近づいてしまった。 “農業大国”フランスが国を挙げて開催する重要行事、農業見本市は、毎年2月末から3月初旬の1週間にわたって開催
中国・上海にある宝鋼集団の工場(2013年6月6日撮影、資料写真)。(c)AFP/PETER PARKS〔AFPBB News〕 中国の余剰生産能力は中国経済を傷つけ、貿易相手国をいら立たせている。 「供給過剰は世界的な問題である。世界的な問題にはすべての国による協調的な努力が必要だ」 中国の商務相、高虎城氏は、2月23日に北京で開かれた記者会見でこのような挑戦的な言葉を口にした。高氏はあらゆる国々が責めを負うべきだと匂わせ、中国の工業品輸出の増加に対する世界的な反発に抵抗した。 供給過剰は確かに世界的な問題だ。だが、高氏が言うような状況かというと、必ずしもそうではない。 大量に輸出される中国の工業製品は至るところで市場にあふれかえり、世界中でデフレ圧力に寄与し、生産者を脅かしている。多くの国の過剰生産能力がこのような供給過剰をもたらしているのであれば、中国だけが槍玉に挙げられるべきではな
2月26、27日の上海G20はリスクオフムードを一変させる画期となるだろう。「最近の市場は世界経済の実態を反映していない、市場安定のために政策手段を総動員する」との声明は、各国の当局が市場を売り崩す投機家に対して、一致して対峙する姿勢を鮮明にした。 財政政策の活用など新機軸も盛り込まれた。具体策に乏しいとの批判はあるが、それは違う。通貨の安定とともに資本移動の監視・規制強化を容認する姿勢を鮮明にしたことにより、焦点の中国の政策自由度は大きく高まる。「過度の変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうる」との声明の含意は大きい。 通貨の競争的切り下げの回避、人民元の価値維持という大義名分のためには、中国は躊躇なく資本規制に踏み込むだろう。これで中国は国際金融のトリレンマから逃れることができ、投機筋の人民元売りは経路を絶たれることになる。 ジョージ・ソロス氏が「中国のハードラン
これまで、爆買いの歴史、中国の人たちが爆買いに走る背景、中国人独自の人間関係、爆買いする中国人への有効なアプローチ方法、訪日中国人に見られる変化などさまざまな視点から「爆買い」現象について紹介してきました。 この連載を始めた2015年3月から、まもなく1年が経とうとしています。約1年前と現在(2016年2月)では、「爆買い」をめぐる状況は大きく異なっています。その変化の速さには驚くほどです。 この連載を始める前から、すでに爆買いは始まっていましたが、特にこの1年にわたる爆買い現象は、日本や日本企業だけでなく中国にも大きな影響を及ぼしました。一方で、「この現象は一過的なものでは?」という心配の声も聞こえてきます。 そこで、今回は「爆買いが日本と中国に与えた影響」について振り返りながら、今後も変わりゆく市場において、爆買いの恩恵を受け続けるための鍵とは何か、お話したいと思います。 日本への影響
日本国内で、英語や中国語にハングルなど多言語表記の案内板を至るところで目にし、多言語のアナウンスを耳にするようになった。 米国に拠点を構えてビジネスをする三井真由美さん(仮名)はその変化に驚いている。久しぶりに訪れた日本は、訪日外国人客の熱烈歓迎ムード一色だった。驚きつつ、「当惑した」というのが真由美さんの正直な感想だ。 「デパートや都心の家電量販店だけではなく、ちょっとしたスーパーやドラッグまでも免税制度が導入されていてびっくりしました。お店のレジで免税価格で買えてしまうなんて」 前職が客室乗務員だということもあり世界各国を訪れたことがある真由美さんだが、「日本ほどの外国人観光客向けのサービスは欧米では見たことがない」という。 ヨーロッパやアメリカでも、外国人観光客に税金を還付する制度はある。だが、いったん税金を払ったあとで別の免税窓口に行くか、または空港の免税カウンターに出向かないと還
1.昨年央以降不安定化が続く中国の為替・株式市場 今年は年明け早々から中国の為替・株式市場が荒れた展開となり、その影響を受けて世界の金融市場が不安定化している。 中国の為替・株式市場は昨年央以降、不安定な状態が続いていた。9月から10月にかけていったん落ち着いたかのように見えたが、10月24日に中国人民銀行が預金・貸出基準金利と預金準備率を同時に引き下げたことを契機に元安期待が再燃した。 中国人民銀行は巨額の為替介入を続けて、必死に大幅な元安を防ごうとしてきたが、現在に至るまでその努力は満足できる成果にはつながっていないように見える。巨額のドル売り元買い介入の結果、外貨準備は11月以降、3か月連続で月間約1000億ドルの急速なペースで減少を続けている。 こうした状況下、中国政府は状況打開のために以下のような様々な政策措置を講じたが、市場との対話能力が不十分なため、市場参加者の理解と信頼を得
もちろん「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が、実体経済や企業業績に与える好影響はほとんどないと考えている。そう考える理由をいくつか挙げてみる。 国内経済を考えると、サービス業については、まずはマイナス金利による金融機関の業績も気がかりなところだが、その他に目を転じると、既に労働市場やオフィス、ホテル、旅客輸送など「完全雇用」の状態にある。円安で海外からの観光客がさらに増えるとしても、それにすぐに対応できるような容量がない。 一方の製造業については、在庫が積み上がりもあって未稼働が残っているが、その要因は国内主体の耐久消費財に対する需要の構造的な低迷と一巡の両方、そして海外景気の弱さによる外需低迷のためであろう。金融緩和はこれらに対処するためのものではない。
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