AI規制の必要性:EUの提案をめぐって 安全保障を名目にすれば、際限なく利用が認められてもよいのか 塩原俊彦 高知大学准教授 2021年4月21日、欧州連合(EU)の欧州委員会は「人工知能(AI)に関する調和のとれた規則を定め特定の連合法を改正する、欧州議会および欧州評議会の規制案」を公表した。これは、企業や政府がAIをどのように使用できるかを規定するための規制案だ。AIのもたらす社会経済的利益と、個人や社会にもたらす新たなリスクや負の影響のバランスをとろうとするアプローチからなっている。ここでは、世界最先端のAI規制の動きについて論じてみたい。 提案の目的と背景 この提案は、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会議長が2019年7月16日に明らかにした「さらなる飛躍をめざす連合」のなかで、「就任後の最初の100日間に、私はAIの人間的・倫理的な意味合いに関する協調的なアプローチのための法