改ざんの「恐ろしさ」を問う(1/3) 不意に、まったく唐突に、イギリスの作家、ジョージ・オーウェルの小説を思い出しました。 その代表作「1984年」は、スターリン時代の旧ソ連をモデルに、全体主義に支配された世界を描いた未来小説です。主人公は政府の「真理省」に勤務し、記録の「改ざん」に携わっています。恐怖政治を敷く党の政策に合わない記述を書き換え、過去と現在の矛盾を見えなくするためです。 あまりに改ざんを重ね、また言語と思考をコントロールされているため、主人公は自分の記憶が正しいのかどうかさえも分からなくなっています。しかし、粛清された過去の指導者の写真を見つけたことから、彼は体制に疑問を持ち始めます。そして禁じられている日記をつけ、そこに「自由とは、2足す2が4であるといえる自由である」と書きつけます。やがて彼は逮捕され、拷問を受け、徹底的な思想改造を強いられます…。 ○怖さに通底する
電子書籍について語られないこと(1/3) アメリカでキンドルが売れ、日本でも5月末にiPadが出て、電子書籍元年と騒がれている。 電子書籍元年は、メディアによって作り上げられたイメージとまでは言わないが、少なくとも期待が増幅されていることは確かだろう。 私も含めてこの件についてコメントを求められた人の多くが感じていることだが、電子書籍の時代が来るための問題点を語ってもそれは取りあげられず、景気のいい話だけが報じられる。それによって電子書籍の時代が来たというイメージが膨らんでいく。 こうしたことは何につけしばしば起こることだが、実態を少しでも知っているだけに、その言葉の空虚さが感じられてならない。 ○すでに何度も「元年」 電子書籍に関心を持ってきた人ならば誰でも知っていることだが、電子書籍元年と騒がれたことはすでに何回もある。 そのたびにうまく行かず、結果として何度でも「電子書籍
だから「温暖化」問題はむずかしい(1/6) 民主党がマニフェストで掲げた、温暖化による気候変動防止に関する中期目標が多くの議論を呼んでいる。1990年比でマイナス25%という数値は、実のところ、その中身が詳細に示されている訳ではないので、具体的にどのような効果があり、どのような副作用を及ぼすのか、その実態を予想することは難しい。 確かに、国際的なリーダーシップを取るという観点からは、意欲的なものだと言える。しかし、このような単純な評価ができるほど問題は簡単ではない。21世紀全体を考える視点から、この提案が一体何を意味するのかを再確認しておく必要がある。 気候変動問題の本質を議論する前に、一つの歴史的な環境問題の解説を試みたい。それは、「アスベスト」である。 ○現在と未来のトレードオフ アスベストというと、なぜこのように危険な材料を使い続けたのか、という疑問を持たれる方も多いかも
あとになってわかってきた「革命」(1/5) どうやら日本にちょっとした革命が起こったらしい。「革命」というと、フランス革命だとかフィリピンの激しい政権交代を思い浮かべるが、革命だったのかどうかがあとになってだんだん明らかになってくる、という不思議な革命が起こりつつあるようだ。 総選挙前まで、自民党でも民主党でもそんなに変わりはない、と思っていた。自民党も民主党も、右から左までいろいろな考えの人の寄り合い所帯で、だとすると、結局のところ大した変わりはないと私も含めて多くの人は高を括っていたのではないか。 朝日新聞が東大とやった合同調査からは、民主党候補者のほうが少しリベラルな傾向が見てとれたが、人間が多数集まってその平均値をとれば多少の違いは出る。そのことが具体的な政治においてどのような意味を持つかまではわからなかった。 ただ私は、少し「懸念」は持っていた。マニフェストにもとづく選
新聞こそ「対米追随」ではないのか(1/5) 鳩山政権の誕生から半月。役所の振り付けのない大臣たちの就任会見をテレビでみて、「これはやるぞ」と思った。 予感の通り、それぞれが突っ走っている光景には、一種の爽快感がある。首相はニューヨークとピッツバーグでの初外交を無難にこなし、国連の温暖化対策会合の「25%削減」演説で点数を稼いだ。「好印象」は大事な「国益」だ。 「マニフェストにとらわれるな」「豹変の勇気をもて」「官僚とうまくやれ」。新聞はいろいろ忠告や助言をするが、なーに気にすることはない。「25%削減」でも「ダムの中止」でも、どんどん前に進んだらいい。 ○新聞が引き留め役に回っている むしろ新聞の側が、半世紀の自民党支配が一夜にしてひっくりかえった事態に自分を合わせられず、「まあまあ」「なにもそこまで」と、とりなし役、引き留め役に回っているような感じすらある。 その印象を強
<足利事件・再審確実で釈放>菅家利和さん(1/9) 今週の<時の人>は、無期懲役刑で服役中に、無実であることが確定的となり、逮捕以来17年ぶりに釈放された「足利事件」の菅家利和さん(62)である。6月4日夕、記者会見した菅家さんは、「警察官、検察官に謝ってほしい。私の17年間を返してほしい」と語った。 4日午後、千葉刑務所から釈放された菅家さんは、弁護団とともに、午後5時前から約1時間の記者会見に臨んだ。拍手に迎えられ、格子柄のブレザー姿でマイクの前に座った菅家さんは、時折、唇をかみしめ、声を詰まらせながら、17年間の思いを語った。 ――まず、足利事件弁護団から質問します。菅家さん、今のお気持ちなどを。 今日は本当にありがとうございます。私はきょう、釈放になりましたけれど、本当に嬉しいです。当時、私は急に犯人にされました。自分としては、まったく身に覚えがありません。私は無実で、
<世界報道写真大賞>アンソニー・スアウ氏(1/10) 今週の<時の人>は、第52回世界報道写真大賞(World Press Photo Award)を受賞した米国人フォトジャーナリスト、アンソニー・スアウ氏だ。スアウ氏は「世界報道写真展2009」が東京で始まったのを機に来日し、自身のこれまでの作品をスライド上映しながら報道写真への思いなどを語った。他の入賞作品の一部と併せてお伝えする。(あらたにす編集部) 【アンソニー・スアウ(Anthony Suau)氏講演会】 スアウ氏は1956年生まれ。87年からヨーロッパを中心に活動し、99年まで、ベルリンの壁崩壊やソ連邦消滅の瞬間、東欧各地や、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦、コソボやチェチェン紛争などの現場に足を運び、決定的瞬間をカメラに収めてきた。 ここ8年ほどは、「アメリカの世紀」といわれた大国が、経済危機に陥るまでの過程を追い続けて
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