1980年代に入ってから,日本の社会学においても民族集団や民族集団間の関係についての研究が増えてきた。それまで,日本の社会科学はなぜか伝統的に民族集団を研究対象とすることに消極的であったが,民族研究がひとたび流行となるや,あたかも必然であるかのように日本の民族集団への関心は高まってきた。つまり,在日朝鮮人をはじめとして,アイヌ,ウチナンチュ,小笠原の欧米系日本人などが,いわば“発見”されだしたのである。 しかしながら,そうした研究潮流にもかかわらず,日本における最大の民族集団については,これまでいっさいの研究が着手されてはいない(註:いうまでもなく最大の民族集団はマジョリティたる「日本人」だが,一般に日本人は民族集団としてのアイデンティティを保持しないため,本論文においては民族集団として同定しない。)。その生態学的特徴,文化,経済,いっさいがナゾのままに放置されているのである。従来の日本の