マーベルのスーパーヒーロー映画『ブラックパンサー』の勢いが止まらない。とにかく、すさまじいまでの、驚天動地の大ヒットが全世界を席巻している。 僕がこの原稿を書いている3月11日の時点で、本国アメリカでは公開から4週目の週末も土つかずの全米ボックス・オフィス首位堅持。だから同地の興収累計は3週目で早くも5億ドル(!)を突破(現在約5億3千百万ドル。「Deadline」より)。 興収だけでなく、批評家からも絶賛されている。後述するが、前大統領夫人のミシェル・オバマも本作を激賞している。これほどまでに「ラディカル」なヒーロー映画が、あり得ないほどの大成功街道を驀進(ばくしん)している。 本稿は、その「あり得ない」達成を実現させるに至った、この作品の根幹にある「気高き理想」について解説を試みるものだ。全米の、いや世界中の観客のあいだに感動の波紋を広げた「ラディカルなアイデア」とはなんなのか、これか