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ブックマーク / manba.co.jp (19)

  • 『水は海に向かって流れる』 田島列島インタビュー | マンバ通信

    水泳部の女の子と書道部の男の子が絶妙な体温でやりとりする青春ストーリーでありながら、父親探しに新興宗教や超能力まで絡むという、荒唐無稽かつ甘酸っぱいという見事なバランスを持った作品。初の単行にして、いきなり「このマンガがすごい! 2015」のオトコ編第3位になるなど様々なマンガ賞にずらーっとランクイン! も納得の素晴らしい作品でした。

    『水は海に向かって流れる』 田島列島インタビュー | マンバ通信
  • アスペルガー症候群の診断が自分を解放する瞬間だった 『見えない違い 私はアスペルガー』トークイベントレポート | マンバ通信

    こんにちは、ドッグナマコです。 先日、マンバ通信のニュースでも告知したフランスのバンドデシネ作品『見えない違い 私はアスペルガー』の作家陣の来日講演に行ってきたのですが、その内容がすごく良かったので失礼コーナーでレポート記事を書くことにしました。 作品の内容については先日のニュース記事で触れているのでそちらを参考にしていただくとして、まずは原作者と作画者について簡単にご紹介します。 写真はすべてアンスティチュ・フランセ東京より提供 原作者のジェリー・ダシェさん(写真左)は、現在34歳の社会心理学博士。27歳の時にアスペルガー症候群と診断された自身の経験を綴ったブログが編集者の目にとまり、そのブログをもとにこの作品の原作を書き上げました。 作画を担当したマドモワゼル・カロリーヌさん(写真右)は、多数の著書を発表してきた経験豊富なマンガ家。自身も病にかかった経験を持ち、そのときのことを『Ch

    アスペルガー症候群の診断が自分を解放する瞬間だった 『見えない違い 私はアスペルガー』トークイベントレポート | マンバ通信
  • 2018年の今、新井英樹に聞きたい『宮本から君へ』のこと | マンバ通信

    写真:津田宏樹 4月からスタートしたドラマ『宮から君へ』がもうじき最終回を迎える。しかし原作を読んでる人ならすでに「あ、これは原作のこのあたりで終わるんだな」と予想がついているはず。『宮から君へ』には、ドラマ化されたエピソードの先がまだある。連載当時、物議を呼んだシーンも含めて。「ドラマ化をきっかけにこの名作を読んでほしい」、そして「もう一度『宮から君へ』について考えてみたい」という思いから、作者の新井英樹にインタビューをおこなった。彼の仕事場で。 春が来て…… ──『宮から君へ』(以下『宮』)は新井さんの週刊連載デビュー作ですけど、新井さんの初投稿作『俺たちには今日もない』(『セカイ、WORLD、世界』に収録)を読んだら、『宮』とはタッチも路線もまるで違っていて。この間にいったい何があって『宮』ができたんですか? さかのぼって話していい? 俺、もともと永井豪さんの『デビルマ

    2018年の今、新井英樹に聞きたい『宮本から君へ』のこと | マンバ通信
  • 世界最速書籍化マンガ『こぐまのケーキ屋さん』カメントツインタビュー | マンバ通信

    写真:川瀬一絵(ゆかい) こんにちは、マンバ通信です。 その昔「マンガを読む」というと、マンガ雑誌やコミックを買って読むことが一般的でしたが、近頃はインターネットのおかげでタブレットやスマホからマンガが読める時代になりました。 また、発表の場も出版社などのメディアを通した媒体ではなく、個人がSNSを使って自由に作品を公開することも当たり前になってきて、巷にはマンガがあふれまくっている今日このごろです……が! Twitterに突如現れた『こぐまのケーキ屋さん』という4コママンガがめちゃくちゃ話題となっているのを、みなさんご存じでしょうか。 ご存じですよね、だってめちゃくちゃ話題ですもん……! 『こぐまのケーキ屋さん』は、パティシエのかわいい「こぐま」と「お客さん」のほのぼのとしたやりとりが4コママンガで描かれていて、そのほんわかエピソードを読んだ人々からは「かわいい」「癒やされました」の声が

    世界最速書籍化マンガ『こぐまのケーキ屋さん』カメントツインタビュー | マンバ通信
  • vol.02 加藤千恵「『くちびるから散弾銃』みたいに楽しく暮らしたいと思っていたけど、誕生日に読み返したら『もう夢はかなってる』と気づいて

    vol.02 加藤千恵「『くちびるから散弾銃』みたいに楽しく暮らしたいと思っていたけど、誕生日に読み返したら『もう夢はかなってる』と気づいて」 写真/川瀬一絵 もしも。今の自分の人格は、自分が見聞きしてきたものの積み重ねによって形成されているのだとするならば。「どんなマンガを読んできたか」を語ることは、「どんな人間であるか」を語ることにとても近いのでないか。人生に影響を与えたと自覚しているマンガはもちろん、かつて読んでいたけれど今ではまったく手に取ることのないマンガでさえ、自分の血肉と化しているかもしれない。だから、マンガについてインタビューしようと思ったのだ。そのマンガを知るためではなく、その人自身を知るために。 加藤千恵。歌人であり、小説家である彼女は、かなりの少女マンガ好き……というだけでなく、価値観の部分でも、少女マンガにかなりの影響を受けているという。その恋愛観や幸福観、死生観な

    vol.02 加藤千恵「『くちびるから散弾銃』みたいに楽しく暮らしたいと思っていたけど、誕生日に読み返したら『もう夢はかなってる』と気づいて
  • どおくまんインタビュー[後編]「100%以上出さないと、面白いものはできない」 | マンバ通信

    どおくまんインタビュー、後編は「スクリーントーンを使わない作風」「主役の顔」など絵についての話から、自身の作品についての感想などを聞いた。現在のどおくまんプロは3人(どおくまん・小池たかし・みわみわ)だが、4人だった時代(3人+太地大介)を楽しそうに語っていたのが印象的だった。 (前編はこちらから) トーンを使わずに、とにかく描き込む ──小池さんがどおくまんさんと初めて会った時に、「スクリーントーンを使った原稿を見せつけた」とおっしゃってましたよね。でも実際は、どおくまん(どおくまんプロ)のマンガにはスクリーントーンを使った作品ってほとんどないですよね? 小池 それは僕の影響ちゃいますか? 貼っても無駄やと思われた(笑)。若い時トーン貼りまくって全然売れんかったから(笑) みわみわ いや、使ったことはあるんですよ。でも結局、使うても画面が暗くなるだけで途中で止めたんちゃいますかね。それか

    どおくまんインタビュー[後編]「100%以上出さないと、面白いものはできない」 | マンバ通信
  • トミヤマ先生! 少女マンガにとってブサイク女子ってなんなんですか? 『圏外プリンセス』の巻 | マンバ通信

    大学でマンガに関する講義をやると、必ずといっていいほど訊かれることがある。 「なぜ少女マンガのヒロインにはブサイクがいないのですか?」 「仮にブサイクという設定でもブサイクに描かれていないのはなぜですか?」 これは素朴でありながら、かなり難しい問いである。いまだかつて、この問いにズバッと答えられた人はいるのだろうか(わたしはいつもゴニョゴニョ言ってごまかしている)。 顔面偏差値があまり高くない女子と超絶イケメンがくっつく、という「顔面格差カップルの誕生」が少女マンガ的ハッピーエンドであるならば、ヒロインの顔はかわいくなくてよいはずだ(理屈の上では)。しかし、多くの少女マンガにおいて、地味&ブサイクなヒロインには何らかの「手心」が加えられている。 でも、その「手心の加え方」は、決して一様ではない。古典的なところでは、メガネを外したら美人になったとか、恋の力で自然ときれいになったとかいうのがあ

    トミヤマ先生! 少女マンガにとってブサイク女子ってなんなんですか? 『圏外プリンセス』の巻 | マンバ通信
  • 【会期終了間近5/30まで】日ペンの美子ちゃん原画展(墓場の画廊) | マンバ通信

    こんにちは~マンバ通信編集部です。 こないだ初めて開催前の展示情報をご紹介することができたんですが、やっぱり慣れないことってやるもんじゃないですね、お陰で体調が悪化しました。健康のことも考えて、やっぱりいつもの遅いやつやりますね。しかもほぼコピペ文章で。 今回、ご紹介する展示は中野ブロードウェイの墓場の画廊で開催中の『日ペンの美子ちゃん原画展』です。 『日ペンの美子ちゃん』って何?って人はあんまりいないと思うんですが、簡単に説明しますと、日ペン習字研究会がやっているボールペン習字通信講座のイメージキャラクターが美子ちゃんでして、その彼女を主人公にした広告マンガのタイトルが『日ペンの美子ちゃん』ってワケなんです。昔だとアイドル雑誌の明星や、少女マンガ雑誌によく広告として掲載されていました。 1972年からスタートしたこの美子ちゃんマンガ、実は年代によって描いてる作家さんが異なるんです。 先

    【会期終了間近5/30まで】日ペンの美子ちゃん原画展(墓場の画廊) | マンバ通信
  • 【4/23まで】バロン吉元 / 寺田克也 バッテラ【bateira】展に行ってきた | マンバ通信

    今日は展覧会の紹介をしたいと思います。 と言っても、大型連休に向けての案内じゃないです。会期は4月23日(日)まで。大型連休までのんびり待ってたら終わるやつです。急いで行ったほうがいいやつ。 で、渋谷のアツコバルーというギャラリーにて開催中の展覧会、『バロン吉元 / 寺田克也 バッテラ[bateira]』に行ってきました。60年代から劇画作家として活躍し、『柔俠伝』などの作品で知られるバロン吉元さんと、そのバロンさんのマンガを小学生時代に読んで衝撃を受けた世代のイラストレーター・マンガ家の寺田克也さんの二人展です。 タイトルの「バッテラ【bateira】」というのは「バロン・寺田」→「バロ・テラ」→「バッテラ」から。寿司?と思ったら、ほんらいポルトガル語の「バッテラ[bateira]」には「小舟」という意味があるそう。絵の描き込みと圧がハンパなくて、「マンガというよりアートでは?」という作

    【4/23まで】バロン吉元 / 寺田克也 バッテラ【bateira】展に行ってきた | マンバ通信
  • 片渕須直×細馬宏通トークセッション 「この世界の片隅に」の、そのまた片隅に(打ち上げ編) | マンバ通信

    前・中・後編でわたってお送りしてきた、片渕須直・細馬宏通のトークセッション。実はイベント終了後の打ち上げで、まだ二人の話は続いていたのです。そんなこともあろうかと、しっかり会話を収録しておりました。当日のイベント参加者も聞けていない初公開のトーク、じっくりお楽しみくださいませ。それにしても、居酒屋の会話とは思えぬ濃さ! 女性視点から見た「この世界の片隅に」 (打ち上げの酒場にて) 細馬 萩尾望都の名前が出てきましたけど、僕は監督が少女マンガを読み込んでるほうなのかと思ってました。 片渕 そうでもないと思いますよ。 細馬 僕の場合、少年チャンピオンを見て萩尾望都を知った後に、続きがあるわけですよ。「この絵は妹の部屋で見たことがあるぞ」と。そこから妹にマンガを借りたりして芋づる式に少女マンガに入り浸っちゃうわけです。こうのさんはそんなに少女マンガ独特の文法は使っていないけど、マンガ家の中では相

    片渕須直×細馬宏通トークセッション 「この世界の片隅に」の、そのまた片隅に(打ち上げ編) | マンバ通信
  • 片渕須直×細馬宏通トークセッション 「この世界の片隅に」の、そのまた片隅に(後編) | マンバ通信

    片渕須直と細馬宏通の「この世界の片隅に」をめぐるトークセッション、後編。今回は呉や広島の地名がたくさん出てくるので、グーグルマップに地名をまとめております。参照しながら読むと、トークだけでなく原作やアニメの理解度もグッと深まると思うので、突き合わせながら読むことをおすすめします。 前編はこちら 中編はこちら 鎧戸を閉めたのはどこから? 細馬 うちの母親は戦後に中学校の教師になって、阿賀とか蒲刈のほうに教えに行ってて、そのへんウロウロしてたみたいですね。 片渕 阿賀とか広とか、当に狭いエリアですけどね。(広域合併される前の)呉って当に狭いんですよ。どこへでも歩いていけるくらい。あの碁盤目になってるところ、1キロ四方くらいじゃないですかね。それくらい狭いところに40万人いた。 トークセッションに出てきたところ 細馬 すごい密度ですよね。僕この前、久しぶりに宮原に行きましたけど、けっこう坂き

    片渕須直×細馬宏通トークセッション 「この世界の片隅に」の、そのまた片隅に(後編) | マンバ通信
  • 片渕須直×細馬宏通トークセッション 「この世界の片隅に」の、そのまた片隅に(前編) | マンバ通信

    作品の細部にまでこだわって描写する監督・片渕須直。作品の細部を読み解こうとする研究者・細馬宏通。「この世界の片隅に」をめぐって、この二人のトークセッションが行なわれた。聞き手も受け手も、ものすごく細かいところについて語っていて、思わず「こまけー!」と声が出そうになるのだが、しかし読めば読むほど、原作も映画当に丁寧に作られた作品であることがしっかりと伝わってくるトークになっている。観客は原作と映画はすでに見ているという前提でのトークなので、未見の方はまず作品を味わってから読まれることをおすすめします。 (2017年1月28日、京都・立誠シネマで行なわれたトークセッションを再構成したものです) 「はだしのゲン」を2巻から読んだこうの史代 細馬 あの映画を拝見して、まず「監督はすごくマンガを読み込む人だな」と感じたんですね。それも単なるマンガ好きでパッパパッパ読んでるということじゃなくて、細

    片渕須直×細馬宏通トークセッション 「この世界の片隅に」の、そのまた片隅に(前編) | マンバ通信
  • おのれらに告ぐ! 平田弘史展についてやけに熱く語ってみる | マンバ通信

    写真:ただ(ゆかい) 平田弘史展が東京の弥生美術館でやってる! というニュースを書こうと思ったんですけども、なーんか僕のテンションと違うんだよなあ、ということで、だらだらしてたら時間が経ってしまった。やばい。前期12日までなのに! コーナータイトル、平田先生直筆です! というわけで気持ちを切り替えて、自分のコラムとして書かせていただきます。 まずね、平田弘史先生という偉大な偉大な真に偉大な天才の存在を知っている人、その劇画に触れたことのある人たちは、 ぬあに〜〜〜! そんな展覧会が〜〜〜! 馬じゃ、馬を用意せえ〜〜〜! ってもう駆け出してるはずなんですよ。 だから、やってますよ、っていう告知でOKなんですよね。だって読んだことあったら、どうしても見たいと思うから。 実物見るしかないじゃないですか だけど僕としては、いわゆる「ファン」じゃない人にも見て欲しいな、と思うんです。というか、これを

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  • わずか13ページの心理劇 さくらももこ『永沢君』 | マンバ通信

    さくらももこの『永沢君』を読み返した。『ちびまる子ちゃん』に登場する「永沢」を主人公に据えた漫画である。「タマネギ頭のあいつ」と言えばピンとくる方も多いかもしれない。1995年の作品で、単行一冊にまとめられている。 『ちびまる子ちゃん』は小学校が舞台だが、『永沢君』は中学校の話。ここに大きな違いがある。登場人物はみな思春期を迎えているのだ。恋愛と自意識。ちびまる子ちゃんにおいてはあまり語られることのなかった二つが前面に出てくる。それが「クラスのすみっこにいる冴えない男子」である永沢を中心に描かれる。 『永沢君』は基的に一話完結で、どの話も非常に面白い。この記事では、その中でも出色の出来である第5話の『性格』を読んでいきたい。微妙なレベルの人間心理を扱った名作である。以下、たった13ページの漫画で3000字ほど書いちゃってますが、まあ、それだけ名作だということで。 「永沢君の性格はよくな

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  • アニメーション版「この世界の片隅に」を捉え直す(5)三つの顔 | マンバ通信

    マンガ版「この世界の片隅に」の第15回、19年9月のこと。周作はうっかり家にノートを忘れ、すずが届けに行こうとする。普段着のまま出ようとするのを見咎めた径子にうるさく言われて、すずは着替えて白粉もはたき、すまし顔で出かける。着替えた服は、やはり径子にうるさく言われて着物から仕立て直した笹模様のもんぺなのだが、これは周作にというよりは径子に気を遣ってのことかもしれない(以来、すずのお出かけの服はきまってこの笹模様だ)。 鎮守府に来たすずはおすましした標準語の口調で「帳面をお届けに上がりました」と一礼して周作にノートを差し出す。出迎えた周作は「えっ」と驚いてからようやく「ああすずさんか」と気づく。 このやりとりを描いた一コマは、読者にちょっと謎をかけている。周作は、一瞬相手がすずであることがわからなかったらしい。では、なぜわからなかったのか。家では見せないかしこまった振る舞いゆえか、それともお

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  • アニメーション版「この世界の片隅に」を捉え直す(3)流れる雲、流れる私 | マンバ通信

    マンガのことばはテキストで、アニメーションは声。 そう書くと、いや、マンガのセリフだって話し言葉ではないか、という反論がくるかもしれない。しかし、たとえ話し言葉であってもそれはテキストである。その多くは抑揚や強弱や速度、あるいは表情を欠いている。もちろん、?や!、あるいは太文字や書き文字による装飾によって多少の表情をつけることはできるし、そうした装飾付きのテキストから頭の中で誰かが話しているところを想像したり、実際に自分で朗読することもできる。しかし、そのやり方は読み手に委ねられている。 たとえば、「ほんらいはアニの役目でしたが風邪のため、わたくしが」というテキストがあるとする。これをわたしたちはどう読めばよいだろう。見たところ、何の変哲もない標準語だ。何の装飾もない。すらすらと、訛りのないことばで読めばよいように思える。 では、次の3コマを見てみよう。上のテキストは実は『この世界の片隅に

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  • アニメーション版「この世界の片隅に」を捉え直す(2)「『かく』時間」 | マンバ通信

    マンガ「この世界の片隅に」には、「かく」場面が多い。鉛筆で、絵筆で、羽で。すずはかくことが好きだ。婚礼の日ですら、嫁ぎ先の片隅に居場所を見つけ、行李の前に座り込んで兄に絵入りのはがきを書く。祝いの席で出たべものをひとつひとつ鉛筆で絵に描いてから、「兄上のお膳も据ゑましたよ。せめて目でおあがり下さい。」とことばを添える。しかし翌朝、はがきの表に自分の名前を書き終えたすずの手がふと止まる。すずは新しい家族に尋ねる。「あのお………… ここって呉市…? の何町…? の何番ですか?」 「ぼうっとしている」すずは、嫁ぎ先の住所すら把握していなかったというわけなのだが、ここでわたしがなぜ「すずの手がふと止まる」と書けたかといえば、マンガのコマ運びがこうなっているからだ。 (『この世界の片隅に』上巻 80ページ) すずが表書きを書くコマはわずか3つにすぎない。けれど読者はこの3コマから、鉛筆の動きと停滞

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  • トリックを暴いたあげく犯人に感謝までされる金田一少年について | マンバ通信

    私は金田一少年になりたい。 大の大人がこんな場所で言うことではない。しかし『金田一少年の事件簿』を読みかえすたび、私は金田一少年になりたいと思ってしまう。とにかくこの男にあこがれる。当にいい役回りだと思う。いくらなんでもおいしすぎると思う。 金田一少年とはどんなキャラクターなのか。まずはそれを説明しておいたほうがよさそうだ。 この男のベースにあるのは「不真面目さ」である。高校の授業をサボる。弁当を早いする。女好きのスケベ。典型的な落ちこぼれ。それが金田一少年である。 強調しておきたいのは、この時点で「最高」だということである。少年マンガの舞台として「学校」が採用されたとき、主人公に要求されるもっとも格好いい振舞いは何か? それが「優等生」であるはずがない。まともに勉強しないことである。「不良マンガ」は数あれど、「優等生マンガ」など存在しないことでもそれは分かる。だからこそ、金田一少年も

    トリックを暴いたあげく犯人に感謝までされる金田一少年について | マンバ通信
  • vol.01 スカート 澤部渡 「高校1年で『神戸在住』を読んだとき、『僕はこっちだったんだ』と気づいたんです」 | マンバ通信

    vol.01 スカート 澤部渡 「高校1年で『神戸在住』を読んだとき、『僕はこっちだったんだ』と気づいたんです」 写真 / 後藤武浩 もしも。今の自分の人格は、自分が見聞きしてきたものの積み重ねによって形成されているのだとするならば。「どんなマンガを読んできたか」を語ることは、「どんな人間であるか」を語ることにとても近いのでないか。人生に影響を与えたと自覚しているマンガはもちろん、かつて読んでいたけれど今ではまったく手に取ることのないマンガでさえ、自分の血肉と化しているかもしれない。だから、マンガについてインタビューしようと思ったのだ。そのマンガを知るためではなく、その人自身を知るために。 シンガーシングライター・澤部渡。ソロプロジェクトである「スカート」の名前のほうが、通りがいいだろうか。いや、世間的には「Mステで、スピッツのバックでタンバリンと口笛を担当していた、あの男」と言ったほうが

    vol.01 スカート 澤部渡 「高校1年で『神戸在住』を読んだとき、『僕はこっちだったんだ』と気づいたんです」 | マンバ通信
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