ある心の傷を抱え、東京から海辺の街の一軒家に移り住んできた貴瑚。虐待され「ムシ」と呼ばれる少年との出会いが呼び覚ましたのは、貴瑚の声なきSOSを聴き救い出してくれた、今はもう会えないアンさんとの日々だった。 誰もが生きていることを祝福されるべき ――杉咲さんは主人公の貴瑚を演じました。役づくりにおいて、どんなことを心がけたのですか? 杉咲花(以下、杉咲):ヤングケアラーであり、ネグレクトを受けていた過去を持つ貴瑚という人物を演じるにあたり、まずは当事者の方や有識者の方からお話をうかがい、資料を読むなどして知識を深めることに重点を置いていました。 ただ、貴瑚として実際にカメラの前に立つ場面においては、自分の用意したプランを現場に持ち込むというよりも、相手と対峙することで生まれてくる感情を大事にできたらいいなという気持ちでした。 ――いろいろな方のお話を聞いたのですね。そのお話は演技にどう反映