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ブックマーク / www.nippon.com (13)

  • 『広尾ふる川』:浮世写真家 喜千也の「名所江戸百景」第38回

    歌川広重「名所江戸百景」では第22景となる『広尾ふる川(ひろお・ふるかわ)』。高速道路にふたをされた古川近辺には、かつて田園風景が広がっていた。 日屈指の高級住宅地に広がっていた牧歌的な風景 現在の古川は、渋谷川の下流部分のこと。同じ川であるが、港区内は古川、渋谷区内では渋谷川と呼ばれ、正確には天現寺橋下からJR「浜松町」駅近くの河口までを指す。江戸時代には舟運が盛んで、川沿いには大名屋敷や寺社が立ち並んでいたという。この絵に描かれている四之橋(しのはし)は、今は南麻布と白金をつなぐ橋である。常陸土浦藩主だった土屋相模守の下屋敷南側にあったことから、「相模殿橋」とも呼ばれていたようだ。 広重は、四之橋から上流側に広がるのどかな田園風景を描いた。橋の左手(南)にある2階建ての大きな店は、嘉永7(1854)年の古地図には「狐鰻(きつねうなぎ)」と記されている。当時の有名な鰻屋であろう。古地図

    『広尾ふる川』:浮世写真家 喜千也の「名所江戸百景」第38回
  • 小松左京の大ベストセラー『日本沈没』から50年:名作誕生の舞台裏

    破壊的な地殻変動によって日が滅亡していく在り様を描き、空前の大ベストセラーとなった小松左京による『日沈没』の刊行から今年で50年となる。ことに「第二次関東大震災」の描写は圧巻であり、いま読み返してみてもリアリティを失っていない。当時の担当編集者が、SF小説史上に刻む名作誕生の舞台裏を振り返る。 浜井 武 HAMAI Takeshi 光文社の元常務、編集者。1938年東京都出身。62年早稲田大学第一文学部卒業後、光文社に入社。編集者として、小松左京、森村誠一、赤川次郎、斎藤栄らを担当。光文社文庫編集長、取締役を経て2000年8月に常務取締役。05年8月退任。 最初のタイトルは『日沈没』ではなかった 「僕が小松さんの担当になったのは、小松さんが『日沈没』を書き始めて4、5年経った頃でした。企画段階から関わったわけではないので、担当としては3代目、小松さんの『日アパッチ族』がカッパ・ノ

    小松左京の大ベストセラー『日本沈没』から50年:名作誕生の舞台裏
  • プーチンが最も恐れているもの

    米国のインターネットサイトThe Journal of Democracy に2022年2月22日に公開された標記の論文(原題はWhat Putin Fears Most)を翻訳し、日語版読者の皆さんにお届けする。 ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。ロシアのプーチン大統領は皆さんに、侵攻はNATO(北大西洋条約機構)のせいであると信じてもらいたいと考えている。動員された19万人に上るロシア兵や海兵ではなく、NATOの東方拡大がこの危機の主因であるとしばしば(この侵略が始まった際のロシア国民に向けた演説を含めて)主張してきた。 「ウクライナ危機は西側諸国の過ちにより引き起こされた」と主張する米国の政治学者ジョン・ミアシャイマーの2014年の『フォーリン・アフェアーズ』の挑発的な論考以来、NATO拡大に対するロシアの反動という物語がウクライナでこれまで継続してきた戦争を説明するための(正

    プーチンが最も恐れているもの
  • 創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか

    インターネットの普及で紙媒体の衰退が著しい。中でも新聞業界の苦境は深刻だ。業界の雄として長年君臨してきた朝日新聞社とて例外ではない。2020年度決算では創業以来最大となる大赤字を記録、早期退職者の応募には数多くの社員が応じるなど、かつてない激震が築地社を襲っている。一体、朝日新聞社の中で何が起きているのか。同社OBがその内幕を明かす。 デジタル化の波に乗り遅れた朝日 朝日新聞社に「エー・ダッシュ(A’)」という社内報がある。季刊で発行される60ページほどの冊子だ。新規事業の説明や職場の話題などが紹介されている。2021年の夏号は、新聞の電子版など同社が力を入れるデジタル事業の特集を組んでいるが、時代の波に翻弄(ほんろう)される大手プリントメディアの苦悩や窮状が紙背からじわりとにじみ出す内容になっている。 社内報の冒頭は、新社長が21年6月の株主総会に報告した20年度決算や個別の事業報告に

    創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか
    batta
    batta 2022/02/20
  • レゲエ界に革命を起こしたリズム「スレンテン」は日本人女性が生み出した:カシオ開発者・奥田広子さん

    80年代半ば、レゲエ音楽にデジタル革命をもたらし、“モンスター・リディム”と称される「スレンテン」。その誕生の裏側には、カシオ計算機(社:東京都渋谷区)の電子キーボードと新卒の女性開発者の存在があった。スレンテンのルーツ・奥田広子さんが、初めてベールを脱ぐ。 スレンテンのルーツはカシオトーンの音源 ジャマイカのシンガー、ウェイン・スミスの『Under Mi Sleng Teng(アンダ・ミ・スレンテン)』は、レゲエの世界に革命をもたらしたと言われる。友人のノエル・デイヴィーと2人で、カシオの電子キーボードを使って作曲したダンスホール・レゲエだ。1985年に大ヒットすると、デジタル音の心地よく、常習性のあるリズムは、またたく間に世界中に広がっていく。 レゲエでは、ドラムとベースのリズム体を「リディム」や「バージョン」、「オケ」などと呼び、これを繰り返すことで曲に鼓動を生む。同じリディムで複

    レゲエ界に革命を起こしたリズム「スレンテン」は日本人女性が生み出した:カシオ開発者・奥田広子さん
  • 本屋を失った街に三省堂書店が現れた日―北海道の留萌ブックセンター(上)

    人口2万5千人の留萌市から屋が消えたのは2010年12月。それから7カ月後、人口30万人以上でないと出店しないルールを持つ三省堂書店が出店した。それはどうしてだったのか。 4月だというのに、その日は雪がちらついた。地元の人は5月の連休が明けるまではスタッドレスタイヤを外さないという。ゆったりとした坂道を登りつめると、眼前に日海が広がる。北海道の西端にある留萌の海岸からは水平線の下へと沈むまん丸で真っ赤な夕陽を見ることができる。 留萌の坂道 美しい地名はルルモッペ(=潮の静かに入るところ)というアイヌの言葉に由来する。明治期ににしん漁により港町として留萌の地が拓けた。炭鉱業も栄え、1910年には留萌線が開通、続いて1932年には留萌港が竣工した。 昭和の頃、正月ともなると、新年を祝う人たちがこの坂道をぎっしりと埋め尽くしたものですよ。 タクシーの運転手が問わず語りに聞かせてくれた。通り

    本屋を失った街に三省堂書店が現れた日―北海道の留萌ブックセンター(上)
  • 新型コロナ問題で台湾が教えてくれたこと―マイノリティーへの向き合い方でその国が真の「先進国」かどうかが決まる

    新型コロナ問題で台湾が教えてくれたこと―マイノリティーへの向き合い方でその国が真の「先進国」かどうかが決まる 社会 暮らし 2020.04.30 世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスについて、台湾は徹底的な水際・封じ込め対策で成功している。感染対策がうまくいった背景に、筆者は台湾が歩んできた歴史の全てが生かされた結果だと考える。特にマイノリティーやジェンダー、社会的弱者への向き合い方に表れており、学ぶべきところが多い。 感染者ゼロの日 4月14日の夜、台湾台北市のランドマークである円山大飯店の客室が初めて「ZERO」という言葉を灯した。新型コロナウイルスCOVID-19について、台湾で新規感染確認0人が報告されたのを受けて、これまで努力を重ねてきた人々をたたえ、ねぎらうための輝きである。 総感染者数―429人、新感染者―0人、死亡者数―6人(4月28日現在) その後、海外より帰台し

    新型コロナ問題で台湾が教えてくれたこと―マイノリティーへの向き合い方でその国が真の「先進国」かどうかが決まる
  • ウェス・アンダーソン監督が『犬ヶ島』で描いた“日本”

    「日映画の影響」を喧伝することに感じる違和感 ウェス・アンダーソン監督の新作『犬ヶ島』は近未来の日を舞台にした、犬が主人公のストップモーション・アニメーションだ。登場するパペットの犬たちの会話は英語で表現され、海外では日語に字幕は付かないが、当然日語を話す日人キャラクターも登場する。2つの言語が入り乱れ、日語を解する人たちにとっては楽しい混乱に襲われる。 物語は今から20年後の日が舞台。犬たちの間に“ドッグ病”が蔓延(まんえん)し始めたメガ崎市で、市長の小林は人間への感染を恐れ、全ての犬をゴミ廃棄場である“犬ヶ島”へ追放すると宣言する。まずは第1号として、小林家の護衛犬であるスポッツが島流しとなった。数カ月後、捨て犬たちの増加した犬ヶ島には、野良犬のチーフを中心にしたレックス、キング、ボス、デュークの5匹のグループが幅を利かせていた。そんな彼らの前に、親友である飼い犬スポッツ

    ウェス・アンダーソン監督が『犬ヶ島』で描いた“日本”
    batta
    batta 2018/05/24
  • 九份、このままではいけない

    今の九份に愛着を感じない「妙さん、九份を案内してください」「一青さんと九份に行きたい」 こんな言葉を掛けられるたびに、私は暗い気持ちになる。なぜなら、人を案内できるほど、私は今の九份に愛着を感じていないからだ。 九份の街は、台湾の新北市瑞芳区の山間部にあり、中心都市の台北駅から車で1時間弱の場所にある。台湾旅行のパンフレットには、大抵、メインストリートに連なる赤ちょうちんと急な石段の九份の街並みの写真が掲載されている。スタジオジブリのアニメ「千と千尋の神隠し」のモデルになった場所だと信じられており(実際は違うらしいが)、日人の間で九份の知名度は、台湾を象徴する観光地と形容していいほど、不動の地位を築いている。 ところが、私は、現在の九份がどうしても好きになれない。 友人や日の親戚を連れ、九份に行くたびに、がっかりさせられる。 「没有(ない)」「趕快(早くして)」「不知道(知らない)」「

    九份、このままではいけない
    batta
    batta 2018/05/12
  • 『BRUTUS』台湾特集表紙問題:台湾人が不満を感じた理由 | nippon.com

    7月15日に発売された日の雑誌、『BRUTUS(ブルータス)』台湾特集号の「表紙」が台湾メディア上で「炎上」と言っていいほど大きな話題になった。 この騒動の前提として、『BRUTUS』はすでに流行に敏感な台湾の人たちから格別な支持を受けていたことがある。台湾の書店やカフェ、クリエイターの手元には必ずと言っていいほど置いてあるこの雑誌は、若い世代の台湾カルチャー、つまり日や米国・欧州の文化を吸収しながら「台湾文化とは何か」を考えつつけん引してきた世代にとって、なくてはならない雑誌で、だからこそこれだけ注目が集まったと言えよう。 「街の表情」を巡り賛否両論表紙は台南の有名な美街である「国華街(グオホアジエ)」の路上写真。 これまでの日の雑誌の台湾特集では、あくまでも主役は「べ物」や「街の雑踏の中にいる人物」だったが、今回の主役は「街の表情」そのものである。 台湾で論争の発端となった意

    『BRUTUS』台湾特集表紙問題:台湾人が不満を感じた理由 | nippon.com
  • What’s Up at Studio Ghibli? Catching Up with Producer Suzuki Toshio

  • 日中関係は、深読みの時代に入った—神戸国際大学教授・毛丹青さん

    いま中国の若者は、ニッポンの暮らしに、そして文化に大きな関心を払い始めている。仕事や留学で日に暮らしたことのある中国人たちがつくるユニークな雑誌「在日」を交流の場に、新たに広がる日中、そして東南アジアの未来を考える。 毛 丹青 MAO Danqing 作家。神戸国際大学教授。1962年、中国・北京生まれ。中国社会科学院哲学研究所助手を経て、三重大学に留学。商社勤務などを経て執筆活動に。2011年日文化を紹介する雑誌『知日』を中国で創刊し、5年間で300万部を売る。2016年3月、在日留学生が描いた日の姿をまとめた雑誌『在日』を創刊。村上春樹作品やドラえもんの翻訳も手がける。著書に『にっぽん虫の眼紀行』(法蔵館/1998年・文春文庫/2001年)などがある。 ここには失われた中国文化の香りがあるこれからの日中関係を考える上で、「爆買い」という現象を強調するのは無意味だ。最近では沈静

    日中関係は、深読みの時代に入った—神戸国際大学教授・毛丹青さん
  • 日本のウェブメディア「ステルスマーケティング」事情

    普通の記事の体裁をとっているが、実は特定商品の広告という「ステルスマーケティング」がネット上を横行している。情報メディアの主流となりながら、コンテンツの作り手が十分な収益を上げるビジネスモデルが容易に成立しないネット世界の日陰の部分を分析する。 ますますウェブ広告が敬遠される時代ユーザーは広告が嫌いだ。 水道橋博士インタビュー 家庭を持つと芸人は駄目になる? 15年2月。私がCINRA.netというウェブメディアのステルスマーケティングを指摘したら、その会社は自社ブログで「ステマの何が悪い」と一度は開き直ったあと、さすがに問題に気づいたのか、これからはやめます宣言をし、過去のステマについては修正すると話していた。そこから3カ月ほど経って、少しは良くなっているのかなと見物にいったらタレントのインタビューの途中に突然出てくる「サントリー『伊右衛門 特茶』」はいまなお「PR」とも付記されず、今日

    日本のウェブメディア「ステルスマーケティング」事情
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