日本で話題の本『父・金正日と私 金正男独占告白』(五味洋治著、文芸春秋社刊)は、北朝鮮の新指導者・金正恩の異母兄である金正男が日本の記者と交わした長年の“メール対話”を紹介したものだ。北朝鮮を知る貴重な第1級の最新資料である。韓国の本屋でも山積みされ関心を集めている。 読んでみて最も印象的だったのは、金正男がきわめてまともな人物だったことだ。スイスでの9年の留学を含め海外生活が長く(現在は中国在住)、国際情勢に明るく、北朝鮮の実情を客観的にとらえており、自分についてもおごりなどなく終始、冷静な語り口だ。すこぶる知的でマナーがよくユーモアもある。 金正男についてはその容貌やファッション、日本での偽名入国事件などから“遊び人”で“ドラ息子”風のイメージがあったが、実際はまったく違うのだ。北朝鮮の将来については中国式の改革・開放しかないことを繰り返し語りながら「祖父(金日成)に容貌だけ似ている正