ウェブ版『美術手帖』でわが目を疑うような記事が出た。 →DIC川村記念美術館が日本画展示を終了。作品を全点譲渡へ 驚きにちょっと言葉もない。かつて開館前から十五年間ここに在籍した者として、ただただ愕然とするばかりである。 欧米の近現代美術を中心とするこの美術館にとって、日本画のコレクションはいわば傍流であるが、それなりに粒揃いの質的水準を保っていたし、20世紀美術にあまり馴染みのない来館者にとって、印象派の諸作品、レンブラントの肖像画とともに、ほっと一息つけるオアシス的な役割を果たしていたのではなかったか。 収集点数こそごく僅かだが、そのなかには長谷川等伯の晩年の基準作たる重要文化財《烏鷺図屏風》が含まれている。この作品は美術館構想が生まれる遥か以前、たしか1960年代に収集された「川村コレクション」の記念すべき第一号だったはず。旧蔵者は團伊能だったと記憶する。コレクションの「原点」を手放