電車に揺られていて ひらめいた「クオリア」 私の研究テーマ「クオリア」というのは、脳が感じるさまざまな質感をあらわす概念のことですが、この考えがひらめいた12年前のことを今も鮮烈に覚えています。電車に乗ってノートに書き物をしていたとき、ガタンゴトンという音が本当になまなましい質感として意識に飛び込んできたのです。 それまでに学んだ、数とか方程式で解けるような科学では扱えないものがあると一瞬にして気づき、非常な衝撃を受けました。その「クオリア」は、従来の脳科学のやり方では太刀打ちできないほどの難しい問題でしたが、私はイギリス留学中に日本の神経科学者の会合で話す機会をもらいました。まだ私の著書『脳とクオリア』も出版前で公の場で語るのはこのときが初めてでした。 これがもう大不評で(笑い)。生意気だ、まともな科学者のやることではないと酷評され、実に苦しい思いをしました。現在でこそ「クオリア」につい