遠藤乾・北海道大教授 明るい極右が握る街/エナンボモン 北仏リール近くに位置する人口2万7千ほどの小さな町エナンボモンに、世界中から30社に上るメディアが押しかけたという。無理もない。戦後70年ほど左派が握っていたこの町の市政を、2014年の地方選で国民戦線(FN)が掌握した。法的な住所をこの地に移したFN党首マリーヌ・ルペンは、前回の12年大統領選挙の第1回投票で、2大政党の候補を抑え、地区でトップに立った。汚職に手を染めた社会党市政の敵失にも助けられた形だが、もはやここはFNの町なのだ。 かつての炭鉱町が落ちぶれて、貧困がはびこり、極右が支配するようになった――。そんな物語に押し込めようとすると、たちまち裏切られる。もちろん、構造的な失業や格差などの問題は抱えているが、町なかでは新興ビジネスが育ちつつあり、中産階級もそれなりに残っており、うらぶれた感は薄い。古くからのポーランド系などの