ヘルダーリンの『アンティゴネー』翻訳を日本語に直し、それを上演することは、10年以上も前から僕が夢見ていることで、その夢を現実とするためにこれまで活動をつづけてきたと言っても過言ではない。もちろん、ヘルダーリンの「ソフォクレス翻訳」の仕事は、その極めて難解な「註解」も含めて真に偉大であるため、僕にはまだ背負いきれない可能性が高いのだが、ふとしたきっかけをいただき、ヘルダーリンの『アンティゴネー』を、ブレヒトの『アンティゴネー』と照らし合わせる作業を始めてみることにした。 ブレヒトの『アンティゴネー』は、ヘルダーリンの『アンティゴネー』に基づいて改作されていると言うが、どの程度似ていて、どの程度異なるのか。 用いる資料はヘルダーリン、ブレヒトのそれぞれの原書に加え、以下の訳書である。 ヘルダーリンの『アンティゴネー』に関しては、英訳「Holderlin's Sophocles」が存在している