私は、規則を破りたかったのだ。 この物語を書こうとしたとき、私の頭に在ったのは規則を破ることであり、それは解放を意味していた。 何を何から解放するのか。 SFをSFに縛り付けている無数の制約から解放したかったのだ。 この物語が扱っている主題を例にすれば、なぜ、過去を変えてはいけないのか? 過去に旅をするという極めて魅力的な、そして自由なアイディアが、現在に連なる過去を変えてはいけないという規則のために、いつも、現在を守るという退屈な物語になってしまうことに、耐えられなかったのだ。 なるほど。過去を変えてはいけないという規則は、現在を守らねばならないという規則に連なる。が、その現在というものが、守るに値するほど素晴らしいものなのか? そんな疑問が、私には、あった。 ポール・アンダースンの『タイム・パトロール』が典型なのだが、現在を変えないために幾つもの規則を作り、それを守る組織を作らざるを得