株主代表訴訟によって株主が追求できる取締役の責任の範囲については、限定債務説(会社法上の責任に限定されるという立場)と全債務説(会社法上の責任に限定されず、取締役が会社に対して負担する一切の債務を含むとする立場)とが対立しています。 「任務懈怠責任」(423条1項)は、会社法上の責任ですから、どちらの立場によっても、株主代表訴訟によって責任を追及できるということになります。 (補足に関する追記) 429条1項の責任の法的性質については、周知のとおり争いがあります。結論だけを示しますと、次のようになります。 法定責任説 429条1項の責任=一般不法行為とは別に法が特に認めた法定責任 ①一般不法行為との競合を認める。 ②悪意・重過失は、任務懈怠について存すれば足りる。 ③賠償の対象である損害には、間接損害も含まれる。 ④「第三者」には株主も含まれる。 不法行為特則説 429条1項の責任=一般不