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ブックマーク / at-akada.hatenablog.com (10)

  • フィクションの哲学のニューウェイブ: エイベルの『Fiction: A Philosophical Analysis』 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    Fiction: A Philosophical Analysis (English Edition) 作者:Abell, Catharine発売日: 2020/06/10メディア: Kindle版 まえおき: フィクションの哲学の現状 最近出版されたキャサリン・エイベルのFiction: A Philosophical Analysisという著作を紹介したいのだが、最初に「フィクションの哲学」と呼ばれる分野の現状について簡単に紹介しておく。 わたしがやっている分析哲学系のフィクションの哲学という分野は、大まかには形而上学・言語哲学系統のものと、美学系統のものに分けられる。 美学系統のフィクションの哲学は九十年代に確立された。もう少し詳しく言うと、九十年代初頭に出た三冊の、すなわちケンダル・ウォルトンのMimesis as Makel-Believe、グレゴリー・カリーのThe Natu

    フィクションの哲学のニューウェイブ: エイベルの『Fiction: A Philosophical Analysis』 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ
  • ウォルトンとグッドマン - Kendall Walton, 表象は記号か - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    2017-05-09追記: 後半を中心に大きく書き直した。 芸術の言語 作者: ネルソン・グッドマン,Nelson Goodman,戸澤義夫,松永伸司出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会発売日: 2017/02/22メディア: 単行この商品を含むブログ (7件) を見る ネルソン・グッドマンの『芸術の言語』には、文学・絵画・建築・音楽といったさまざまな表象芸術のカテゴリーを、体系的に位置づけ・比較するという側面がある。 この点で、グッドマンとウォルトンの体系的な比較ができないかということをぼんやり考えている。なぜ両者を比較する必要があるかというと、話は簡単で、上記のようなこと(各芸術形式の体系的な位置づけ)をやっている人が、そもそもこの二人くらいしかいないからだ。 しかし、そもそも枠組が全然違う上、両者とも常識とは乖離した異様な発想をしているので比較もかなり難しい。ところが、実は都合よ

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  • スーパーヒーロー研究の紹介 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    先日「スーパーヒーローの概念史」という論文を書いた。その時の記事でスーパーヒーロー研究には先行研究が多いと書いたが、以下でスーパーヒーロー研究の基書を紹介することにしたい。需要があるのかよくわからないが、書き残さないと自分で忘れてしまいそうなので書いておく。 まずアメリカにおけるコミック研究の現状を簡単に紹介しよう。The Routledge Companion to Comicsの序文によると、アメリカで、キャリアの最初からコミックを専門にしてコミックで博論を書いたのは、2005年に Alternative Comics を博論として出版したCharles Hatfieldさんがはじめてらしい。もちろんそれ以前にもコミックを扱った研究はあるのだが、「コミック研究が専門」という人はほとんどいなかったそうだ。 例えば、日でもよく参照されるマクラウドのUnderstanding Comic

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  • トマス・ネーゲル「アホらしさ」 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    タイトルのthe absurdは翻訳だと「人生の無意味さ」になっている。定訳は「不条理」。個人的には「アホらしさ」がいいような気がしているのでそれでいく。 以前からこの論文は構成がわかりにくいと思っていたのでメモ。 コウモリであるとはどのようなことか 作者: トマス・ネーゲル,永井均出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 1989/06メディア: 単行購入: 3人 クリック: 42回この商品を含むブログ (38件) を見る Thomas Nagel, The absurd - PhilPapers Nagel, Thomas (1971). The absurd. Journal of Philosophy 68 (20):716-727. よくある議論 多くの人は人生はアホらしい、不条理なものだと感じている。ネーゲルの念頭にあるのはカミュやサルトルだろう。 ネーゲルはこの直観をうまく表現

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  • 本の紹介: ディキンソン『文学の学び方』 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    文学の学び方―付/論文・レポートの書き方 L・T・ディキンソン著、上野直蔵訳『文学の学び方―付/論文・レポートの書き方』、南雲堂、1969年 これ、とてもいいなのだけど、そう言えばあまり知られていないかもしれないと思ったので紹介する。書は、大学で文学を学ぶ学生のために文学研究のABCを教えるために書かれたものだ。原著の初版が1959年、翻訳の初版が1969年で、もはや古典的な教科書といってもよいかもしれない。 私は学生のときにこのを偶然見つけ、パラパラめくって惚れこんですぐ購入した。それ以来、文学研究/批評ってなんだっけ?となるたびにこのをめくっている。 文学研究の教科書というと、イーグルトンの『文学とは何か』みたいに、最新の批評理論を教えるみたいなものを想像するかもしれない。しかしこれはもっとずっとクラシカルで、もっと基的なことが書いてあるだ(古いだからというのもあるかもし

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  • Shaun Nichols, Stephen Stich「フリの認知理論」 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    Stich, Stephen P. & Nichols, Shaun (2000). A cognitive theory of pretense. Cognition 74 (2):115-147. philpapers.org 序 例とフリの特徴 フリをはじめる: 初期仮定 推論による発展 非推論的発展 適切なフリ行動の生産 認知的隔離: フリ者の後続する認知状態へのフリの限定的な効果 フリに潜在する認知メカニズムの理論 2フレームワーク仮定 可能世界ボックス、アップデーターとスクリプトエラボレーター: 認知アーキテクチャーに関する三つのさらなる仮説 フリ行動を説明する: 情報と動機づけ 他の理論との比較 フリのオンラインシミュレーション説 ゴードンとバーカーのフリ理論の問題と修正 フリのメタ表象説 パーナーの説 結論 想像やフリに関する認知モデルを提案した有名な論文。 著者らによれば

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  • Nurbay Irmak「ソフトウェアは抽象的人工物だ」 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    Irmak, Nurbay (2012). Software is an abstract artifact. Grazer Philosophische Studien 86 (1):55-72. Nurbay Irmak, Software is an abstract artifact - PhilPapers 存在論って二種類あって、 ひとつは、「物理的なものしか存在しない」みたいな偏狭な世界観から出発して、その世界観の中にいろいろなものを位置付けようとする(あるいは、うまく位置づけられなくて元の世界観を微修正していく) もうひとつは、常識的にあると考えられている(あるいは語りや思考の対象である)ものは全部認めた上で、それらのものの同一性や存続の条件を与える 私は後者の方が好きなのだけど、著者はここで明確に後者をやっている。対象となるのは、ソフトウェア。firefoxとかWindo

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  • Dominic Lopes『コンピューターアートの哲学』 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    A Philosophy of Computer Art 今日ブックフェア「分析美学は加速する」で買った。まだ序文しか読んでいない。Lopesのはいくつか読んだが、どれも素晴しいものなので期待している。 (傑作しか書かない人という印象をもっている) そもそもコンピューターアートってなんだよという話だが、コンピュータをメディアとして利用する芸術という感じらしい。多分「メディアアート」と呼ばれるものの多くやビデオゲームなども含まれるのだろう。似た用語はいくつかあって、スタンフォード哲学事典には「デジタルアートの哲学」という項目がある。まあコンピューターアートなり、デジタルアートなどを扱った哲学文献がそこまでたくさんあるわけではないけれど。 序文はなかなか興味深い。コンピューターアートは新しい芸術形式であるため、それに関わる人は、いくらか哲学をせざるをえない。「芸術」「作品」「意味」といった概

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  • 『分析美学基本論文集』の論文セレクトについて - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    分析美学基論文集 『分析美学基論文集』ついにでました! 分析美学という分野が認知され、ついに論文集まででたことは大変すばらしいことです。 訳者の方々の労力には頭の下がる思いです。 ただ、ちょっと論文セレクトについてはいろいろ言いたいことがあるので書いておく。まず、この論文集にはいくつかまさに「分析美学基論文」と言えるようなものが入っている。それらの訳が出たことは非常に価値のあることだ。しかし、なぜ入っているか意味不明というか、これが基論文だと誤解されたらいやだなと思うものがいくつか入っている。あとなぜこれが入っていないのかわからないというものがいくつかある。 まず目次をあげる。 アーサー・ダントー「アートワールド」 ジョージ・ディッキー「芸術とはなにか――制度的分析」 ポール・ジフ「芸術批評における理由」 フランク・シブリー「美的概念」 ジョセフ・マゴーリス「芸術作品の評価と鑑賞」

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  • Stacie Friend「偉大なカブト虫の論争: 名前による想像の研究」 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    http://philpapers.org/rec/FRITGB Friend, Stacie (2011). The great beetle debate: A study in imagining with names. *Philosophical Studies* 153 (2):183-211. 1. 想像の指図 2. 標準的説明 3. 単称的想像 4. 想像の方法 5. 概念とその対象 6. ネットワークを同定する 7. 内容と真理条件 8. 結論 今度勉強会で読むのでレジメ作ってたんだけど、これは当にいい論文だ。著者は「フィクショナルキャラクターは存在しないよ派」なんだけど、「フィクショナルキャラクターは存在するよ派」の私でも一瞬「これが正しい立場なのでは…」と説得されかかった(まあ最後の最後でうまくいかないのだけど)。 ↓勉強会 分析美学研究会、次回は12/5。Stac

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