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ブックマーク / econ101.jp (22)

  • ノア・スミス「東京は新しいパリだ」(2023年7月17日)

    「しあわせに暮らせる場所は,この世に2つだけ.我が家と,パリだ.」――アーネスト・ヘミングウェイ 地上で最高の都市はどこだろう? 「ニューヨーク市」って答える人がいても,笑い飛ばしたりはしない.いまなお名目上は世界最大の経済大国で金融ハブの役回りをしているニューヨーク市は,他のどこの都市でもかなわないほどの経済力を有しているし,地球上の名もなき数百万もの人々にとって,いまでもあそこは夢の都市だ.「上海」って答えが返ってきたら,ぼくとしては懐疑的になってちょっと口を「へ」の字に曲げてしまうかもしれない.とはいえ,富と権力の中心としていずれ中国が先進諸国を圧倒する定めにあると思ってる人にとっては,上海はなるほど論理的な選択だろうね. でも,実のところ,最高の都市といったら東京だ. かくいうぼくは,またまた東京にいくべく支度を調えてるところだ.今年は,これで三度目になる.今度はじめて東京を訪れる

    ノア・スミス「東京は新しいパリだ」(2023年7月17日)
  • ブランコ・ミラノヴィッチ 「三つの裏切り ~プーチン大統領のテレビ演説を読み解く~」(2022年2月22日)

    ●Branko Milanovic, “Putin’s Century of Betrayal speech”(globalinequality, February 22, 2022ロシアが「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認した2022年2月21日に、ウラジミール・プーチン大統領はテレビ演説〔英訳版はこちら〕を行ったが、それにしても近年稀に見る異例の政治演説の一つだった。6,000語を超える語数のスピーチが、原稿もなしで55分以上にわたって淀(よど)みなく続けられた。どうやらプロンプターも用意されていなかったようだ。 演説では、プーチンなりの歴史哲学が――ふとしたかたちでというわけではなく、意図的に――露(あらわ)になっている。ロシアの過去100年の足跡についての――筋違いとは言えないまでも――狭隘(きょうあい)な歴史観が露になっているのだ。多くの原因と多くの

    ブランコ・ミラノヴィッチ 「三つの裏切り ~プーチン大統領のテレビ演説を読み解く~」(2022年2月22日)
  • ビル・ミッチェル 「主流経済学者は本当に大赤字と国債買入を受け入れたのか?」(2021年2月23日)

    (http://bilbo.economicoutlook.net/blog/?p=46945です) ジョン・メイナード・ケインズは1930年に「孫のための経済的可能性」という小文を書いた。彼は向こう100年のうちに技術的なシフトが起こり、労働者は週に15時間しか働けなくなるだろうと考えていた。この予言はそうした生産性の向上が起こったという意味では正しかったが、労働者がそこから利益を得るという意味では間違っていた。ケインズは生産性が均等に分配されると考えていたのだ。彼が過小評価したのは資が利潤から利潤を吸い上げる能力、そして、そのために国家を掌握して立法や規制の力を利用して賃金の伸びを抑制することを確実にする能力だった。 主流経済学者たちは資の代理人として、不平等の拡大と国家の再構成に手を貸してきた。このことは、財政赤字及び中央銀行の債務購入について、主流派経済学者の見解が明らかに変化

    ビル・ミッチェル 「主流経済学者は本当に大赤字と国債買入を受け入れたのか?」(2021年2月23日)
  • ノア・スミス「政府負債の危険なんて、誰もわかっちゃいない」(2021年1月22日)

    (ツイッター上でのアドバイスを受けて一部訳を変更しました) たぶん、経済学者はこの面白そうな問題を考えるべきなんだろう。 Noah Smith No one knows how much the government can borrow マクロ経済学で最も重要な疑問の1つ、それは変な話だけど経済学者が研究しない事を選んでいる疑問だ。その疑問とは、「政府はどれだけ安全に借りることができるか」。 じつのところ、この疑問への答えは誰も知らない。そして、誰も答えを知らないんだから、これが今、考えなきゃいけない特に重要な疑問なのかどうも誰も知らない。COVIDの救済支出の結果、合衆国の連邦政府負債がGDPの125%まで、2008年の金融危機前のGDPの60%くらいから急増してしまってるんだから、借り入れの制約について考える時なんじゃないのと、あなた思ってない?そしてバイデンがこれから数年、さらに赤

    ノア・スミス「政府負債の危険なんて、誰もわかっちゃいない」(2021年1月22日)
  • コーエン & クルーグマン「インタビュー, pt.6: ニューヨーク市について」(2018年10月10日)

    [“Paul Krugman on Politics, Inequality, and Following Your Curiosity,” Conversations with Tyler, Oct. 10, 2018] コーエン: あなたの見解だと,ニューヨーク市はひとつのまとまりとしてどれくらいうまく運営されてると思います? クルーグマン: いまいちかな.それって,なにと比べて? 実はね,ぼくはビル・デブラシオ〔NY市長〕 が好きなんだけど.彼はいくつかほんとにいいことをやったと思ってる.教育でやったことがそうだし,住宅価格を手頃にするためにやったことも,かなり実のあることだ.でも,ニューヨーク市はすごく大きいし,あれこれも問題も大きいから,人々はそこがわかってないかもしれない. ぼくに言わせるとね,これほど公共交通機関に依存していて,そのくせ公共交通機関が市のコントロール下になくっ

    コーエン & クルーグマン「インタビュー, pt.6: ニューヨーク市について」(2018年10月10日)
  • アレックス・タバロック「プラットフォームの経済学」(2020年11月17日)

    [Alex Tabarrok, “Platform Economics in Modern Principles,” Marginal Revolution, November 17, 2020] どうして Facebook は無料なんだろう? どうしてクレジットカードは無料どころかお金がもらえたりするんだろう? 独身者向けのバーはたまに女性限定でドリンク無料にしつつ,男性にはそうしないんだろう? こうした問いは,どれもプラットフォーム経済学の領域に属してる.プラットフォーム経済学は,うまれたばかりの分野だ.ティロールとロシェが書いた2003年の重要論文が,事実上,この分野を生み出したにひとしい―――あと,その論文は,2014年にティロールがノーベル経済学賞を受賞した理由のひとつにもなっている.新しいとはいえ,プラットフォーム経済学は,現代経済にとって必要不可欠な財を取り扱っている.そこで

    アレックス・タバロック「プラットフォームの経済学」(2020年11月17日)
  • ジョセフ・ヒース「『批判的』研究の問題」(2018年1月26日)

    [Joseph Heath, “The problem with “critical” studies,” In Due Course, January 26, 2018] 学部生だった頃,こんな風に思っていた――《「客観的」「価値自由」なやり方で社会現象を研究する実証主義が社会科学で蔓延しているのは世界の災厄だ.そんなものは幻想だ,というか有害な幻想だ.だって,客観性をよそおいつつ,その裏には隠れた目標があるんだから.つまり,支配しようという利害関心をもってるんだ.人々を主体ではなく研究の対象として扱うなんて政治的に中立じゃない,だってそうやってうみだされる知識ってのは,どういうわけかうまいぐあいに,まさに人々を操作し管理するために必要とされるたぐいの知識になってるもの.つまり,「客観的な」社会科学はちっとも価値自由なんかじゃない,むしろ抑圧の道具になってるじゃないか.》 これに替わる選

    ジョセフ・ヒース「『批判的』研究の問題」(2018年1月26日)
  • ジョセフ・ヒース「保守主義者へのアファーマティブ・アクション?」(2017年 11月9日) — 経済学101

    Joseph Heath, “Affirmative action for conservative academics?,  In Due Course, November 9, 2017. 2016年のエモリー大学にて、キャンパス内の諸々の歩道にチョークで書かれたトランプ支持派のスローガンを目にした一部の学生たちはとてもひどくトラウマを抱いてしまったために、それらのスローガンを「ヘイトスピーチ」の一種だとして調査するよう大学当局に要求した。大学全体がセーフ・スペースであるべきだという発想は、米国の2大政党の両方に対するいかなる支持の表明からも学生たちが隔離されるという事態を招く可能性を含んでおり、意見を自由に交換する場所としての大学という理念に対立するものであると多くの人から見なされた。同時に、自分たちの中にトランプ支持者が存在しているという事実がエモリー大学の学生たちをあれ程までに警

    ジョセフ・ヒース「保守主義者へのアファーマティブ・アクション?」(2017年 11月9日) — 経済学101
  • ジョセフ・ヒース「人種差別と人種意識:『啓蒙思想2.0』没原稿より」(2014年5月28日)

    On racism and race consciousness Posted by Joseph Heath on May 28, 2014 私の『啓蒙思想2.0』の抜粋を一連のシリーズとして、ナショナル・ポスト紙で4月14日から19日にかけて1週間掲載できたのはジョナサン・ケイおかげだ。感謝している。ただ紙面で、連載の最後の見出しが「人種差別を打ち負かす方法」と掲載されたことで、私は少し不利益を被っている(新聞を読む時には、見出しをつける人と、記事の執筆者が別人であることに覚えておくことは重要だ)。このような見出しで掲載されたことで、人種差別を克服するのに取り込み可能な簡単な処方箋が存在していると、まるで私が考えているかのように思われてしまった。(Ivor Tossellも、グローブ&メイル紙で、記事にして取り上げ、「ジョセフ・ヒースは、アメリカの人種差別問題を軽減させる診断と治療を

    ジョセフ・ヒース「人種差別と人種意識:『啓蒙思想2.0』没原稿より」(2014年5月28日)
  • タイラー・コーエン「この経済学者が疫学者をどう思ってるかと申しますと」(2020年4月12日)

    [Tyler Cowen, “What does this economist think of epidemiologists?” Marginal Revolution, April 12, 2020] このところ,疫学の片鱗に触れる機会がいつもよりも増えてる.理由はみなさんご承知のとおり.ぼくが触れてるのは,疫学分野のほんの隅っこでしかないのは理解してる.今回の話は,べつに疫学への不満をぶちまけるつもりで書いてるわけじゃない.経済学だって,似たような問題に苦しんでいるんだから.ただ,ぼくらに提示されてる主流の疫学モデルに見受けられる限界を少しばかり書き留めておきたい. #1. そうした疫学モデルは,短期の弾力的な変化よりも長期の弾力的な調整の方が強力だという点を十分にわかっていない.短期的には,世間の人たちは対人距離を維持するけれど,長期的には,我が身を守るのにいちばん効果的な対人距

    タイラー・コーエン「この経済学者が疫学者をどう思ってるかと申しますと」(2020年4月12日)
  • ビル・ミッチェル「日本式Q&A – Part 4」(2019年11月11日)

    Q&A Japan style part4 Posted by Bill Mitchell on Monday, November 11, 2019 このエントリは最近の私の日旅行で提起された4部構成のQ&Aシリーズのラストである。このエントリでは、たった1つだけの質問に答えている。解答は、政府(の金融部門)と中央銀行の関係の核心に触れることで、〔中央銀行〕準備預金の複雑な会計処理を説明している。よって、学習のためには幾ばくかの前提知識が必要となっている。現代貨幣理論(MMT)に関する今回の一連の質問は、最近の私の日旅行中に提起されていることを思い出して欲しい。日におけるMMTに関する公での議論は(他国と比較すれば)相対的に進んだものとなっている。日では、広範な政治領域にまたがって政治運動家達が、緊縮財政に反対を表明する有力な手段として、MMTを議論し宣伝している。MMTの基礎原理

    ビル・ミッチェル「日本式Q&A – Part 4」(2019年11月11日)
  • デイビッド・アンドルファット「米国経済学博士号における人種多様性」(2018年12月5日)

    David Andolfatto, “Racial Diversity in the Supply of U.S. Econ PhDs“, Macro Mania, December 25, 2018 このエントリを書く動機になったのは「経済学の人種多様性の欠如の悲惨な損失(The Dismal Cost of Economics’ Lack of Racial Diversity)」というエシェ・ネルソンのコラムだ。私は特に下のデータに衝撃を受けた。米国機関からの経済学博士号取得者で、米国籍および米国永住権者は539人、そのうちアフリカアメリカ人はたったの18人だった。 他のグループやより長期間だとどうなるのか、もっと幅広くデータを見てみるのはおもしろいのではないかと私は思った。米国国立科学財団からデータを集めてくれたリサーチアシスタントのアンドリュー・スピワックに感謝したい。 まず、

    デイビッド・アンドルファット「米国経済学博士号における人種多様性」(2018年12月5日)
  • ジョセフ・ヒース「移民についてのカナダ特殊論」(2017年7月1日)

    Canadian exceptionalism Posted by Joseph Heath on July 1, 2017 | Canada, immigration, multiculturalism 先日のことになりますが、イギリスの選挙ではジェレミー・コービンが躍進し、フランスではマクロンが現象を巻き起こすことになりました。この両出来事を受けて、右派ポピュリズムの熱狂は崩壊し始めている、といった楽観論が見られます。こういった楽観論が現れたのは、ドナルド・トランプ、彼の存在がある程度は理由になっているでしょう。トランプの選挙とそれに引き続いた彼の言動は、醜悪なアメリカ人の完全な自己標のようなものになっていました。このトランプの一連の言動は、他国の有権者に「トランプに権力を与えた熱狂を我々は克服しているのだ」と思わせ、これらの国におけるポピュリズムの趨勢に相当のダメージを与えたことは

    ジョセフ・ヒース「移民についてのカナダ特殊論」(2017年7月1日)
  • ピーター・シンガー「倫理学と進化:『輪の拡大』出版から30年」(2011年5月18日)

    ⚫︎ Peter Singer, “Ethics and evolution: The Expanding Circle, thirty years on“, (ABC.net, religion & ethics, May 18, 2011) 「社会生物学」という単語はE・O・ウィルソンが1975年の著書『社会生物学:新たな統合』で造語したものだが、幾つもの専門分野を組み合わせた彼の画期的な研究は、社会的な行動の進化についての理論を人間について当てはめたために、議論の嵐を巻き起こすことになった。 人間の性の理解についてウィルソンは多大な貢献を行ったが、倫理学について書いた際には、この分野について興味を持った科学者が犯しがちな誤謬をウィルソンも行ってしまった。 彼自身の研究は倫理学にとってはどのような意味を持っているか、ということについてウィルソンが間違った理解を持っていたことは、30年

    ピーター・シンガー「倫理学と進化:『輪の拡大』出版から30年」(2011年5月18日)
  • ノア・スミス「貧困と悪癖についてケヴィン・ウィリアムソンが間違っているところ」(2019年8月3日)

    [Noah Smith “Why Kevin Williamson is wrong about poverty and bad behavior,” Noahpinion, August 3, 2019] 先日,ブルームバーグのコラムでこう論じた.先進国において,「悪癖」は――ドラッグ使用・暴力・片親の育児・怠け癖などは――貧困の主な原因ではない.証拠に挙げた国は日だ.日は,薬物使用も暴力も片親の育児も怠け癖も低い率にとどまっているのに,貧困率がアメリカにほぼ並んでいて,豊かなヨーロッパ諸国よりも大幅に上回っている.日にそうした悪癖はとても少ないのに先進国にしては貧困率が高いのだから,悪癖が総体として貧困の主な原因になっているわけがない. 『ナショナル・レビュー』のケヴィン・ウィリアムソンが,このコラムに異論をはさんできた.キツい調子の反駁文で,ウィリアムソンはぼくのコラムをこう言

    ノア・スミス「貧困と悪癖についてケヴィン・ウィリアムソンが間違っているところ」(2019年8月3日)
  • アンドルー・ポター「サッカーのダイビング問題の解決方法」(2018年6月22日)

    How to solve the problem of diving in soccer Posted by Andrew Potter on June 22, 2018 | culture サッカーワールドカップで、ダイビング(ないし「シミュレーション」)が、美しい試合に悪影響を与えているとの別の関心事が沸き立っている。4年ごとに、普段は競技に無関心なニワカサッカーファン達が熱狂し、そのニワカ達は突如皆して、世界最高のサッカー選手達の一角に多量のイカサマ師がいることに気づくのだ。 今回のワールド・カップもいざ滞りなく始まったのだが、1週間経過した後、突っ伏し倒れ、身悶え、苦悶、転げ回り、体のくねらせ、倒れ込む、といった騙すような選手の挙動によって試合が定期的に中断する恒例行事が起こった。これ受けて、我々は毎度の疑問が沸き立っている。「もしなんらかの対処があるならそれは実行可能だろうか?

    アンドルー・ポター「サッカーのダイビング問題の解決方法」(2018年6月22日)
  • タイラー・コーエン「世界各国の正直さ」

    Tyler Cowen “Civic honesty around the globe” Marginal Revolution, June 22, 2019 旅行に出てて話題にちょっと乗り遅れてしまったけれど,とにかくもこの件を蒸し返してみよう。 市民の正直さは社会資と経済発展の必須要素であるが,しばしば物質的な利己心と対立する。私たちは世界40か国355都市における実地実験を用い,正直さと利己心とのトレードオフを検討した。私たちは異なる金額が入った17000個以上の財布を公的機関や民間機関に届け出,財布を受け取った側が返却のために持ち主に連絡を取るかを計測した。ほぼすべての国において,入っている金額が大きいほど市民が財布を返却する可能性が高かった。この結果は非専門家及び専門家の双方が予想しえなかったものだ。追加的なデータは,私たちの主要な発見が利他的な配慮及び自分自身が泥棒であると見

    タイラー・コーエン「世界各国の正直さ」
  • スコット・サムナー「10%インフレ目標を日本が達成するのに必須なことは?」(2019年6月2日)

    [Scott Sumner, “What would Japan have to do to achieve a 10% inflation target?,” The Money Illusion, June 2, 2019] まさか日が 10%インフレ目標を採用するとは思わないし,採用した方がいいとも思わない.ただ,かりに 10%目標を採用した場合を思考実験として考えてみると,なかなかつかみがたい考えをはっきりさせる役に立つ. 10% インフレ目標をとったときに,日の金利とベースマネー需要がどんな風になるか考えてみよう.超過準備付利 (IOR) はないと仮定する.すると,こうなりそうだと推測できる: #1. 日の金利はおおよそ 10%(±2%)になるだろう. #2.日のマネタリーベースはだいたい GDP の 5%から10%ほどになるだろう. 1つ目の推測の根拠となっている事実は

    スコット・サムナー「10%インフレ目標を日本が達成するのに必須なことは?」(2019年6月2日)
  • アレックス・タバロック「ソ連捕鯨:20世紀屈指の環境犯罪」(2019年5月22日)

    [Alex Tabarrok, “One of the Greatest Environmental Crimes of the 20th Century,” Marginal Revolution, May 22, 2019] これほど急激に乱獲がなされた例は歴史上にも数えるほどしかない――しかも,全てがほぼ秘密裏になされていた.ソビエト連邦は,1946年の国際捕鯨取締条約の加盟国だった.この条約では,各国が1年当たりに捕鯨できる数量が割り当てられていた.商業捕鯨が1986年に禁止されるまでに,ソ連は南半球でザトウクジラを累計2,710頭を捕獲したと報告していた.実際には,ソ連の船団はその18倍近くのクジラを捕らえていたうえに,ザトウクジラ以外のクジラも数千頭捕獲していた.これは,周到かつ大胆不敵な欺瞞だった:ソ連船団の船長たちは船を偽装し,科学データを改竄し,国際的な監視・取り締まり当

    アレックス・タバロック「ソ連捕鯨:20世紀屈指の環境犯罪」(2019年5月22日)
  • ジョセフ・ヒース「ワクチン接種は集合行為問題だ」(2015年2月5日)

    Joseph Heath, “Vaccination is a collective action problem“, (In Due Course, February 5, 2015) 何週間か前、集合行為問題の理屈を理解することは多くの人にとって難しい、という投稿を書いた(ホッブズの難しいアイディア)。集合行為問題とは、人々のやりとりがよくない結果にいたるのだが、だれもそれを止める動機を持たない、という状況のことだ。 NHL選手(の間でのおたふく風邪の流行) [1] 2014年にナショナルホッケーリーグ − NHL – 選手の間で起きたおたふく風邪の流行 や トロントでの麻しんの流行で予防接種がニュースになっているので、私はこのところ毎日この問題を考えてしまう。ワクチン接種に関する議論にずっと私はイライラしているのだ。なぜかというと、みんな自分の子供にワクチン接種を受けさせない親は不合

    ジョセフ・ヒース「ワクチン接種は集合行為問題だ」(2015年2月5日)