シアターコクーンでシス・カンパニー『ザ・ウェルキン』を見てきた。ルーシー・カークウッドの新作の日本初演で、加藤拓也演出である。新型コロナウイルス濃厚接触者が出て休演があったが、再度上演できるようになった。 舞台は1759年のイングランド、サフォークの田舎町である。11歳の少女を殺した罪で死刑を宣告されているサリー(大原櫻子)が妊娠しているかどうかを判断するため、助産婦のエリザベス(吉田羊)をはじめとする12名の既婚女性が陪審員として集められる。女たちがサリーの妊娠について議論するうちに、さまざまな秘密が浮かび上がり始める。 冒頭以外は裁判所の1室で展開されるという点で『十二人の怒れる男』に似ているのだが、ここに出てくるのは20世紀の男たちではなく、家事で手一杯の18世紀の女たちである。この作品における不在の中心とでも言えるようなものは家事であり、女たちは陪審員としてのつとめを果たす最中も常
参院選が終わった。選挙期間中に続いた猛暑は、各陣営にとって大きな負担になっただろうが、ここでは選挙カーが走る道路や候補者が演説をする駅前のすぐそばで、何が起こっていたのかを書いてみたい。 夏のほうがつらい 「冬の寒さよりも夏の暑さの方がつらい」 私が路上生活者の支援活動に関わるようになって、今年で29回目の夏を迎えるが、その間、幾度となく当事者から聞いてきた言葉である。 個人差はあるが、比較的、路上生活歴の長い方からは「冬の寒さにはある程度、体が慣れるし、服を重ね着してしのぐことができるが、夏の暑さにはどうにも対処できない」という声を聞くことが多い。また、暑さだけでなく、デング熱やチャドクガによる皮膚炎等、虫に関わる健康被害も夏に起こりやすく、多くの路上生活者を苦しめてきた。 東京都が今年4月に発表した路上生活者の生活実態調査(注1)によると、東京23区の路上生活者(聞き取りができた320
「TOKYO UNITE(ユナイト)」の発足記者会見に臨んだ関係者は来賓の小池百合子・東京都知事(前列左端)以外全員男性だった=東京都文京区で2022年7月7日午後2時52分、村社拓信撮影 東京オリンピック・パラリンピックでは「スポーツには世界と未来を変える力がある」との大会ビジョンが掲げられた。その説明には「多様性と調和」や「未来への継承」などの言葉が並ぶ。東京五輪は23日で開幕から1年がたった。理念は日本社会に根付いたのか。 河瀬直美氏が総監督を務めた東京オリンピックの公式記録映画で、印象的なコメントがある。大会組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言について、国際オリンピック委員会(IOC)委員の渡辺守成氏(63)が語ったくだりだ。 「日本はムラ社会。グローバルスタンダードになっていない。森会長の失言は五輪開催以上に、日本にとってプラスになったのかもしれない」 IOC委員「日本は後進国
音楽4団体の生稲晃子氏・今井絵理子氏「支援」への疑問と、業界の今後 高橋健太郎 音楽評論家、音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア 参議院選の公示から1週間ほどが過ぎた6月30日、思いがけないニュースが音楽界を揺るがした。日本音楽事業者協会(音事協)、日本音楽制作者連盟(音制連)、コンサートプロモーターズ協会、日本音楽出版社協会の4団体が、自民党から出馬した生稲晃子氏と今井絵理子氏を支援する「決起集会」を開催したのだ。 他業種であれば、業界が「族議員」的な政治家を抱えようとするというのは、特に珍しい光景ではないのかもしれない。だが、音楽界では業界団体が選挙で特定の候補を支援するのは前例がなかった。とりわけ、筆者が驚いたのは、音制連を含む4団体が揃って、それを行ったことだった。 芸能プロダクションを中心とした音事協は、歴史的に自民党との関係が深かったと思われる。元「おニャン子クラブ」
来年度からの「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の策定について話し合う文科省の第2回有識者会議が7月26日、オンラインで行われた。この日は委員や専門家が家庭や図書館、特別支援教育などにおける読書の現状や取り組みを紹介。デジタル技術の活用について多くの意見が出された。 東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センターの佐藤賢輔特任助教は子どもとデジタルの関わりについて、「デジタル媒体はテレビや動画視聴、ゲームに占められ、読書や学習は現時点では一般的ではない」と指摘。絵本や本との触れ合いは子どもの発達に必要とした上で、「一人読みをする子ども、読み聞かせをする時間がない保護者にとって、ナレーションが付いているデジタル絵本は役に立つ。個別最適な読書環境を整備するために、紙とデジタルそれぞれの特徴を生かした施策が必要」とした。 専修大学の野口武悟教授は多様なニーズに応える読書環境に
日本学術会議は、軍事用と民生用のどちらにも応用できる「デュアルユース」技術について、それ以外の技術と「単純に二分することはもはや困難」とする文書をまとめ、小林鷹之・科学技術担当相に提出した。人工知能(AI)や量子技術など安全保障にも関わる科学技術の重要性が高まる中、軍事転用される可能性を見極めて研究を一律に規制することは難しいとの見解を示した形だ。 学術会議は2017年、防衛装備庁がデュアルユース技術の研究を助成する制度について、「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と指摘する声明を公表した。ただし、そうした研究を禁止はせず、大学などで審査する制度を設けるべきだとしていた。また、1950年と67年には、「戦争を目的とする科学研究は行わない」などとする声明も出している。
英国のスコットランドで、中世以降の「魔女狩り」の犠牲となった人々の名誉回復を図る動きが進んでいる。スコットランド自治政府のスタージョン首相は今年3月、議会で正式に謝罪した。何が起きているのか。現地を訪ねた。【ダンディー(英スコットランド)で篠田航一】 今につながる歴史 「私は恐ろしい歴史的な不正義を認め、処刑された全ての故人に謝罪します」。スタージョン氏は議会でそう演説し、処刑された人々は魔女ではなく人間だったと強調。さらに「動機の一部にはミソジニー(女性嫌悪)があった」と述べた。演説は3月8日の国際女性デーに行われた。 冤罪(えんざい)を晴らすため議会への請願活動などを続けてきたスコットランドの女性弁護士クレア・ミッチェル氏(51)はこう話す。「今さら数百年前の故人の名誉回復をしても意味がない。そういう声もありました。しかし歴史に学ばない者は、また同じ歴史を繰り返します。これは今につなが
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