ある書店に勤めていたときのことだ。問い合わせを受けていた老年の女性客から、「あなたは、どうして本が好きになったの?」と尋ねられたことがある。何かの拍子に、「どうしたら、孫がもっと本を読んでくれるのか」という話になり、その流れで尋ねられたように記憶している。 そのとき、どう答えたのかは覚えていないが、ひどく無難でありきたりな回答だったと思う。何ということはない。ただ、家にも学校にも居場所がなかったからだ。 私が幼稚園の頃には、すでに家庭は荒れていた。父親は酒に弱い人間で、精神的に脆く、それでいて他者への攻撃を繰り返す人物だった。私が小学生の頃には仕事を休みがちで、当然家には金がなく、貧しい生活を送っていた。そんな状況のなか、追いつめられた母親はたびたびヒステリックな声を上げた。 家の中が地獄であったように、学校もまた地獄だった。私はいじめのターゲットになり、男子生徒からも女生徒からも攻撃にあ
![図書館という場所|波多野七月](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/57773552cd114595119ecd5346e7f633aa381f5e/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fassets.st-note.com%2Fproduction%2Fuploads%2Fimages%2F84917098%2Frectangle_large_type_2_0f1acb81becbbabfc28fec919c9413e9.jpeg%3Ffit%3Dbounds%26quality%3D85%26width%3D1280)