書評: 落合陽一「魔法の世紀」

落合陽一「魔法の世紀」を読んだ． 気安く書評を書く約束をしていたのだが，本文を読んでからエライことになったと気づいた．例えて言うなら，ヴォルフガング・パウリの「相対性理論」の書評を引き受けてしまったようなものだ．念の為に申し上げると，パウリは21歳にして一般相対論を含む当時最先端の理論物理学論文を全て読み，4次元テンソル解析という高度な数学を用いることでその全てを統一的に解説してみせた魔法使いだ． 落合陽一はその作品や研究内容から「現代の魔法使い」と呼ばれている．彼を紹介する映像や文献は数え切れないほどあるが，TEDxオーガナイザとしては是非この映像 (TEDxTokyo 2014) で紹介したい． 映像を見てもらうと，彼が何かを作り出すほうの魔法使いだと思うだろう．僕自身もそう思っていた． ところが本書「魔法の世紀」を読むと，彼のもう一つの才能を思い知ることになる．それは，巨人の足跡を現