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明朝のロケット操縦士ワン・フー氏の謎
轟音と煙とともに消えた男 〔略〕一五〇〇年ごろの中国。時は明王朝。人類初の宇宙旅行を企てた男がいた... 轟音と煙とともに消えた男 〔略〕一五〇〇年ごろの中国。時は明王朝。人類初の宇宙旅行を企てた男がいた。竹製の特別あつらえの椅子に端然と腰掛けた男、その名は王冨[ワンフー]、明の高級官吏である。椅子の後ろには四七基の火薬ロケットがノズルをそろえ、凧が二つ、椅子を引っ張りあげている。四七人の苦力[クーリー]が一基ずつ、ロケットの導火線にマッチで火をつける。 「バーン!」 耳をつんざくような爆発音、つづいてモウモウたる煙。煙が晴れたとき、哀れな王冨の姿は残っていなかった。ただ淋しく、粉々になった椅子の残骸が王冨の運命を物語っていた。急いで駆け寄った人々はつぶやいた。 「ああ、王冨さんは天国へ行っちゃった」 王冨がニュートン力学をマスターしていれば、天国へ到着するのは早くて六、七分後と見積もっていただろうが、彼はたぶんその予定よりもかなり早めに天国に着いたにちがいない。それにしても、戦争の道具として
2015/05/25 リンク