『佐瀬稔著『狼は帰らず アルピニスト森田勝の生と死』を読む』

ひつぞうの偏愛的読書【13】 佐瀬稔著『狼は帰らず アルピニスト森田勝の生と死』 （ヤマケイ文庫）山と渓谷社1980年初刊 ※写真はネットから借用いたしました。 こんばんは。ひつぞうです。今夜は読書の備忘録。戦後アルピニズムの歴史に鮮烈な足跡を残した森田勝の生涯を、スポーツノンフィクションの名手佐瀬稔氏が綴った迫真のドキュメントです（文章のトーンに緊張を与えるために、森田さんを呼び捨てにする無礼をお許しください）。 ★ ★ ★ 「ヤマヤ」「課題」「バリエーション」。自分の山行記録にこれらの言葉を用いるとき、言葉が孕む先鋭的な響きに自分が相応しくない、つまり、贋者であるという後ろめたさを感じる。だが、登山のスタイルと表現は各人各様。正解と決まったものはない。価値の基準があるとすれば、感動を呼べる記録であるか否かの一点ではないだろうか。誰にも真似できない、命を賭けた登攀の記録であってみれば殊更