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田中はあのとき確かに「分かりました」と言った。その約束がほごにされたのだ。 鋭い目つきのまま早足で... 田中はあのとき確かに「分かりました」と言った。その約束がほごにされたのだ。 鋭い目つきのまま早足で田中の席に近づいた翔子は、その前のパイプ椅子に座る大柄な男性の存在に気付いた。イツワの山谷本部長だ。仕立ての良いスーツにロレックスの時計を着けた山谷は、翔子の血相を変えた鋭い視線が田中に突き刺さっていることに気付いた。 「えっと、こちらはベンダーの方かな?」 柔和な笑顔を向けられた翔子は、深く一礼をした。 「初めまして。『サンリーブス』の澤野と申します」 「ほお、サンリーブスさん……えっと。そっか、アナタが澤野さん。いや、サンリーブスさんには期待以上に活躍いただいて。何分、よろしく」 「恐れ入ります」 翔子は笑顔で取り繕ったが、目は笑っていなかった。人の表情から本心を探ることに長けている山谷は、翔子の目の中に怒りを感じた。 「何か、トラブルでも?」と尋ねる山谷に、横から田中が割って入った。 「