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「ハンチバック」書評 暴かれる健常者の無知と特権性|好書好日
「ハンチバック」 [著]市川沙央 こんな小説を待っていた。今期の芥川賞受賞作は、軽やかで読みやすい... 「ハンチバック」 [著]市川沙央 こんな小説を待っていた。今期の芥川賞受賞作は、軽やかで読みやすいが、社会の根幹に関わる多くの問いを孕(はら)む。障害者の生と性。生殖権、反出生主義、優生思想、フェミニズム。まどろむ読者の目を覚まし、各々(おのおの)の生の倫理に向き合わせる力強い物語だ。 中学2年で発病した先天性の障害ゆえに、湾曲した背中と気管切開した喉(のど)を持ち、グループホームで暮らす身寄りのない40代女性の釈華(しゃか)。自らをせむし(ハンチバック)の怪物と呼ぶ彼女の望みは妊娠し、中絶すること。若い介護職員の男性と「弱者同士」の共犯関係を結び、願望を実現させようとする。風俗業界やネットの隠語や二次元カルチャーに精通した語り口は「オタク」そのもの。ままならない自己の身体や周囲の環境や日本社会を皮肉と自虐交じりに描写する小気味良いテンポの文体は、可哀想な障害者像、道徳的に共感すべき他者像
2023/08/05 リンク