時代の風：大学という社会装置＝長谷川眞理子・総合研究大学院大学長 | 毎日新聞

始まりは知への欲求 ものの由来を知ることは大切だ。それは面白いだけでなく、当たり前だと思っている現状を、異なる観点から見直すきっかけを与えてくれる。 たとえば、哺乳類の中耳には「つち骨」「あぶみ骨」「きぬた骨」という三つの小さな骨があり、それらが鼓膜に連動して音を聞く役目を果たしている。この仕掛けは絶妙であり、耳が聴覚のための装置であることは自明だ。ところが、中耳の由来を見ると、それは魚が陸に上がった後になって、空気を伝わってくる振動を音としてとらえるようになってからできたものであり、中耳の三つの骨は、実は顎（あご）の骨の一部からできてきたのである。 さて、大学という社会装置である。昨今は大学改革の一層の促進ということが叫ばれており、国立大学法人は（１）世界のトップを目指す大学（２）特定の分野で活躍する大学（３）地域貢献を果たす大学、の三つから一つを選び、それぞれの目標達成のための計画を立

[high190]

"大学が、現在の社会状況に適合した役目を付加していくことは必要だが、もともと大学という組織がなぜ出現し、なぜそれが連綿と続いてきたかの理由を知っておくことは必要"

[stratos1976]

“大学という社会装置がそもそもどのような由来でできたものであり、それが続いてきた理由は何なのかについての根本的な認識が、日本の社会にあまり共有されないまま、現在の大学改革の議論が進められている”