『起終点駅 ターミナル』 桜木紫乃 【読書感想・あらすじ】

出版年で見ると本作は『ホテルローヤル』『誰もいない夜に咲く』の前となる作品だが、その物語としての完成度はもっとも高い印象を受けた。 著者の作品は総じてページを多く消費するものではなく、比較的短い物語の中で話の核となる部分を濃密に描き出す作品が多い。 余計なものを削ぎ落して作り上げられた作品といった印象である。 本作ではその部分がとりわけ研ぎ澄まされているように感じ、深く心の奥へと突き刺さった。 6編の目次は以下のとおりである。 かたちのないもの 海鳥の行方 起終点駅（ターミナル） スクラップ・ロード たたかいにやぶれて咲けよ 潮風(かぜ)の家 とりわけ本作の各編には根無し草のような血縁といった意味合いにおける孤独な人々が多く登場する。 といっても孤独な人生を描くのではなく、これまで読んだ作品と同じように人と人との関係性が印象深い作品となっている。 帯の折り返しに著者の言葉として以下の言葉が

[neputa]

孤独感が強い人生を強いられてきた人ほど数少ない縁を深く大切にするのかもしれない。言葉を研ぎ澄まし文章を削り短い作品で濃密な物語を紡ぐ桜木紫乃作品は今回も素晴らしかった。