【北に消えたテナー 永田絃次郎の生涯】北朝鮮編（１） (1/3ページ) - MSN産経ニュース

「半島の舞姫」の出迎え 北朝鮮の首都・平壌を流れる大同江ほとりの一等地に、平壌冷麺（れいめん）の老舗「玉流館」がある。かつて、この場所に「半島の舞姫」とうたわれた世界的な舞踊家・崔承喜（チェ・スンヒ）の舞踊研究所があった。１、２階が宿舎、３階が事務室、４階がけいこ場。崔が飛ぶ鳥を落とす勢いだった１９５０年代半ばごろ、金日成（首相、後に国家主席）がよく訪ねてきた。 崔の弟子は金日成の「真っ白な長靴」をよく覚えている。当時、幼かった弟子が金日成の長靴とは知らずに、いたずら書きをしてこっぴどくしかられたからだ。「（崔は）困ったことや希望があるときは、直接（金日成首相側に）話をもっていってしまい、（朝鮮労働）党の幹部を困惑させていた」と振り返る。 だが、５８年１０月、絶頂期にあった崔は、金日成が出した教示によって突然、失脚させられてしまう。名指しこそしなかったものの「ある舞踊大家」として崔の行状を