複雑さを生きる : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE（読売新聞）

流動する現実の制御法 よく、リアルな見かたをしろ、とか、あの人はリアリズムに欠ける、という言葉を耳にするが、そこで言うリアリズムとは、いったい何なのだろう。 空理空論でなく現実に即した考え方、と決めてしまえば、とりあえず安心できそうだが、それでは満足できる答えにならない。たとえば、「治安の悪化」という問題ひとつをとりあげても、そう呼ばれる社会現象にはさまざまな側面が含まれるし、状況はつねに変化する。何が治安の悪化を示す「現実」で、どうすればその「現実」を打破できるのかは、いつでも、誰にとっても一つに定まるものではない。「現実」も、それに囲まれた人間の側も、つねに複雑な軌跡を描きながら揺れ動いている。 この本は、そうした状況の中で社会に働きかける方法として「やわらかな制御」を唱える。事前に定めた計画を孜々（しし）として実現するというのでなく、流動する状況との応答をくりかえしながら、その場にか

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安冨歩『複雑さを生きる』(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4000263501)の書評。