クララとお日さま [著]カズオ・イシグロ ノーベル文学賞を受賞し、世界的な作家の仲間入りをしたイシグロの6年ぶりの新作は、高度な人工知能を搭載した人型ロボットが語る近未来SF小説だ。 ショートヘアで浅黒い肌のクララは、売れ残りの型落ちながら、ずば抜けた洞察力と高い共感力を備えている。買ってくれたのはジョジーという10代前半の少女とその家族。彼女の「人工親友」としての使命をまっとうすべく、クララは献身的に尽くし始める。 人間の孤独や愛の概念の学習には、ジョジーと幼馴染(おさななじみ)リックとの関係はうってつけの教材だ。だがジョジーは病弱な上、観察するに乗り越えがたい社会的格差が将来を夢見る二人の幸福を阻んでいるらしい……。そこでクララは持てる力のすべてを駆使し、ジョジーの救済に奮闘するのだ。 イシグロは本作で、どんなに高い知性の持ち主でも、客観的事実を否認し、妄信に陥ってしまう可能性があるこ