創作活動に携わる人たちは、それだけ心が繊細なせいだろうか、あの大震災にショックを受け、その後の活動も大きく変化したという人が少なくない。漫画家のしりあがり寿さんもそのひとりである。「頭の中が震災だらけになってしまった」というしりあがりさんの作品は、全国紙に掲載している4コマも、マンガ誌に描く中編も、すべてが震災一色に彩られた。人間の心理の「あや」をすくい取りながら、ナンセンスかつシニカルな笑いを取っていた印象がぼくにはあるのだが、震災後の彼の作品は、切ないほどに人間の命に向き合い、運命の無情に寄り添うものとなった。 震災によって立ちすくんだ。しかし、震災が、自分の周囲にしか関心がなかった多くの人たちの「顔を上げる」きっかけともなったはずだというしりあがりさんは、傷んでしまったこの社会が向かうべき姿を、いまの「空気」から読み取っている。 (以下インタビュー全文) 大越) 3月11日の震災