2005年4月のJR宝塚線脱線事故から7年。私たちは遺族や負傷者、司法関係者ら約30人に、刑事裁判の意味を問いかけた。「処罰感情」の実像を知りたかったからだ。浮かび上がったのは、被害者は自分なりの「納得」を求めており、その道程は一様ではないということだった。 「遺族は、被告人に対する厳しい処罰感情を抱いており――」 昨年7月29日、神戸地裁101号法廷。JR西日本の山崎正夫元社長(68)の論告求刑公判で、検事が被害者の処罰感情について語り始めた。怒り、悔しさ、JRは無くなってほしい――。検事は声を張り上げて遺族や負傷者の「峻烈(しゅん・れつ)な処罰感情」を代弁した。 だが、神戸地裁が下した判決は無罪だった。 妻を亡くした尼崎市の男性(55)は、判決を受け入れた。 月命日ごとに事故現場で山崎元社長と顔を合わせていた。事故から8カ月後の05年12月上旬、自宅で会った山崎元社長は「25