現在の中華人民共和国は歴史上前例のない巨大な実験である。その将来がどうなるかを正確に予測することは難しい。しかし、大きく分ければ可能性は、共産党独裁を維持し続けるか、民主化が始まるかの2つしかないだろう。 その2つの可能性を占うカギは今の中国にはない。国内の反対勢力が徹底的に弾圧されているため、民衆の「経済的欲求」の満足が、どの程度まで「政治的要求」に昇華していくかを正確に予測することができないからだ。 だからといって諦める必要はない。世界には中華人民共和国以外にも、中国人が統治する国家・地域があるからだ。誤解を恐れずに申し上げれば、今後中国で何かの弾みで真の民主化が進んだ場合には、台湾がそのモデルとなる。逆に今のままなら、シンガポールあたりが参考になるだろう。 台湾モデル 若い読者には想像できないかもしれないが、筆者が外務省入省前に台北で中国語を学んでいた1970年代中頃、台湾は国民党の