核燃料の大半が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)が起きていたことも明らかになった東京電力福島第1原発の事故。避難生活の長期化や農作物の風評被害など影響は計り知れず、東電の刑事責任を問う声も浮上している。「千年に1度の災害」による放射性物質(放射能)漏れは予見できたのか。事故後の対応に瑕(か)疵(し)はなかったか。識者らの見方はさまざまで、仮に捜査当局が立件を目指したとしても高いハードルがある。 「刑事事件として考えると、一般論として業務上過失致死傷罪が視野に入る」と話すのは、元最高検検事の土本武司・筑波大学名誉教授(刑事法)だ。 原子力施設内の事故で過失が問われた例として、被(ひ)曝(ばく)した作業員2人が死亡した平成11年9月のJCO東海事業所(茨城県東海村)の臨界事故がある。独自の「裏マニュアル」が存在するなど違法な作業工程が明らかになり、JCO幹部ら6人が業務上過失致死罪などで起訴さ