量子力学はいわゆる古典力学とは本質的に異なる世界像を提示するので、自由意志をめぐる問題を考察するさいにはそれなりに知っておくべきものだと言える。そして優先度は高い。じっさい自由意志の哲学に取り組もうとするさいには、例えば〈決定論的オートマトン〉と〈非決定論的オートマトン〉のパワーの違い、チューリングマシンの仕組み、無意識にかんするフロイトの理論などの、純粋哲学の外部の知見をいろいろと知っておいたほうがいいのだが、量子力学はそうしたリストの上位に入る。それゆえ私は、例えば《停止性問題を解決するプログラム[*]は存在しえない》という命題の証明を見た後などに、「では河岸を変えて量子力学のモデルを構築できるようになることを目指しまずはヒルベルト空間のことや自己共役演算子のことを勉強しよう!」などと提案したくなる――だいたい「波束の収縮」のモデルをつくることができるところまで進めば〈量子力学が自由意
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