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ブックマーク / note.com/shinshinohara (14)

  • 「言語化」考|shinshinohara

    言語化は「言葉を操る」とは違う。言葉を巧みに操ることは、言語化から最も遠い姿だと思う。言葉に言葉を重ねたら、自分の感覚から遠ざかってしまう。言語化は、自分の感覚に肉薄することであって、言葉を連ねることとは違うように思う。 だから、言語化は、言葉巧みな人よりも言葉の拙い人のほうが最も近いところにいるように思う。自分の感覚を言葉にできず、もどかしい思いをしているなら、それは最も言語化に近い状態。言語化は、自分の感覚に肉薄しようと四苦八苦して言葉を紡ぐことなのかな、と思う。 言語化のもう一つのコツは、人に伝わるかどうかを指標にしないこと。人に伝わることを指標にすると、どうしても常識的な言葉を選ぶことになり、自分の感覚から離れてしまう。言葉の選択も制限されてしまう。自分の感覚により近づけた、と、自分でしっくりくることを大切にすること。人を指標にしない。 自分がしっくりするなら、その分野では使われな

    「言語化」考|shinshinohara
  • 石油文明とケインズ経済学が農家の跡継ぎを減らした|shinshinohara

    の農家は超高齢化が進んでいて、それでいて後継者がいないのが悩みとなっている。実は先進国はどこも同じような悩みを抱えているらしく、15年前、イギリス王立農業大学に留学していた学生が「イギリスでも高齢化と後継者不足は問題になっていますよ」と。 これは「エネルギー革命」に関係しているように思う。戦前にも石油の利用は始まっていたが、まだ石炭の利用が主だった。自動車はまだそんなに普及が進んでおらず、トラクターなどの農業用機械も普及していなかった。まだ牛や馬を飼って耕していたら大したもの、人力で耕す農家も多かった。 戦後、石油で動く動力が急速に普及した。トラクターは大面積をあっという間に耕すことを可能にした。一人が土日に耕すだけでコメを育てられる時代になった。国民の約半数が農家だったが、労力がいらなくなった分、農家はもっと減ってよい時代になった。そして減った。 もう一つはケインズ経済学。戦前の自由

    石油文明とケインズ経済学が農家の跡継ぎを減らした|shinshinohara
  • 「儲かる農業」の掛け声の裏で|shinshinohara

    はこのところ、「儲かる農業」ばかりを目指してきた。儲かるといえば野菜などの園芸作物。野菜の売上は、もはやコメの売上を超えている。コメは作っても儲からず、トマトの方が高く売れる。なんせ、同じカロリーならトマトはコメの100倍高く売れるのだから。 農水省はコメばかりにこだわるのをやめ、儲かる農業を推進しろ!という声がこのところ、大きかった。国民からも政治家からも批判の大合唱で、さしもの農水省も世論に負け、コメを優先する政策を改めようとしている。そしてコメも、アメリカに対抗して安く作れるよう、生産性を高めようとしている。 では、世界一の農業国と言えるアメリカは、あれだけ世界中に料輸出するくらいなのだから儲かる農業なのかというと、そうではない。小麦やトウモロコシなど穀物は、政府から所得保障という名の補助金が出てるから農家もなんとか生活できてる状態。つまり作れば作るほど政府からの持ち出しが増え

    「儲かる農業」の掛け声の裏で|shinshinohara
  • 食品ロスは本当にムダなのか?|shinshinohara

    品ロスは522万トンあるという。一人当たり年間42kg、毎日ご飯一杯分に相当するべ物がムダになっているという。そうでなくても料自給率の低い日品を無駄なくべれば、世界の飢餓を減らすにも貢献するのでは?というわけで、品ロスをゼロにしようという運動もあったりする。ただ。 品ロスをゼロにすることは危険だということを指摘する話を見たことがない。 たとえば原発で、むやみに丈夫にするのはムダだから原子炉の壁もできるだけ薄くしようとしたら、危険なことはすぐにわかるだろう。工業では「安全余裕」という考え方がある。もし想定以上のことがあっても耐えられる余裕。 料というのは、少しでも足りないとなると飢えてしまう。飢えれば働くどころの騒ぎではない。人を飢えさせないようにすることは非常に大切。だとすると、少しくらい事故が起きても融通できる余裕を確保しておく必要がある。その余裕は、何も起きな

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  • 石油が採れづらくなっている|shinshinohara

    石油が採れづらくなっている。石油を採るのにかかったエネルギーより、たくさんの石油エネルギーが採れなければ、経済的にもエネルギー的にも意味がない。石油が噴水のように吹き出していた時代は、採掘エネルギーの200倍の石油が採れたという。しかしシェールオイルは10を切っている。 エネルギー的に黒字にするためには、採掘エネルギーの3倍は必要。石油をガソリンや軽油に作り替えるのにもエネルギーが必要だから。この数値にどんどん近づいている。石油大手は、採掘エネルギーがかかりすぎて採算が悪くなり、石油に投資しなくなっている。しかも。 2019年から2020年にうっかり、サウジアラビアは石油を増産してしまい、石油価格が大幅に下落したことがあった。新型コロナで需要が低迷していたことも手伝って、石油価格は大いに低迷。この結果、シェールオイルを採掘する会社は投資を諦めたりするところが増えたらしい。 この時に投資が減

    石油が採れづらくなっている|shinshinohara
  • 人類は化石燃料を食べている|shinshinohara

    あまり認識されていないが、化学肥料は化石燃料のエネルギーで製造されている。特に大量のエネルギーを必要とするのが窒素肥料。空気に含まれる窒素ガスをアンモニアに変換する。これには天然ガスのエネルギーを利用することが多く、アンモニアの製造だけで世界のエネルギー消費の1~2%にもなる。 ロシアが硝酸アンモニウムという重要な窒素肥料を世界の45%ものシェアを握っていたのは、豊かな天然ガス資源があったから。これがウクライナ侵攻のために手に入らなくなった。硝酸アンモニウムの半分が世界から消えた格好。 このため、化学肥料が世界的に不足している。不足しているなら作ればいい、とは簡単に言えない。空気中の窒素ガスをアンモニアに変換する設備を作るにも時間がかかるし、何より天然ガスのようなエネルギーが必要。そのエネルギーさえ手に入りにくくなっており、化学肥料の製造がままならない。 化学肥料は、天然ガス以外のエネルギ

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    fumikony
    fumikony 2022/08/15
  • 呪いを解除し、失敗を楽しむ|shinshinohara

    私のところに来てくれる学生やスタッフには、まず「呪いの解除」から始めさせて頂く。ほとんどの人が、親や教師、指導者の言うとおり、指示通りに動かねばならない、失敗なんか許されないという「呪い」にかかっている。約1ヶ月ほどかけて、この呪いを解くことにしている。 最初の1ヶ月は、危険がない範囲で、なるべくたくさん失敗してもらう。失敗したら叱られるという経験ばかりしているので、とても失敗を恐れる「呪い」がかかっている。私は「あ、そうなんですよ。皆さん方ここで引っかかるんですよねー」と言って、一緒に失敗の観察を楽しむ。 「なんでこうなっちゃったんでしょうね?」と聞いても、たいがい、「わかりません」が返ってくる。そこで「ここ、どうなってます?」と着眼点を伝える。すると「こうなってます。あ、だからか!」と気づいてもらえる。「なるほど。ではどうしたらよいと思います?」と尋ね、仮説を立ててもらう。 こうしたこ

    呪いを解除し、失敗を楽しむ|shinshinohara
  • 期待や願望は現場・現実を見えなくする|shinshinohara

    阪神淡路大震災の時、私が出入りするようになった東灘区の避難所では、当初、初期のボランティアは3人しかいなかった。1500人の被災者が寝泊まりする場所で。 他方、テレビでは連日ステーキとかが振る舞われ、なんなら焚き火を囲んでギターを弾いてるボランティアたちの姿が映っていた。 「ボランティア?どこにおんねんそんなの!」「ステーキ?ってみたいわそんなもん!」1日に配給されていた弁当は、おにぎり二個、小さな牛乳パック一個、菓子パン一個。以上。それでも配給されるだけマシになった方。ステーキや焼きそば振る舞うなんて、そんな夢みたいな話はここにはなかった。 当時、NHKは深夜に被災地での行政対応がテロップで流れていた。それによると、神戸市で配られているお弁当は確か740円と表示されていた。このため被災地を知らない人は「結構いい弁当べてるなあ」という感想をもつ人が多かった。けれど実態は、おにぎり二個、

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    fumikony
    fumikony 2022/01/18
  • 有機農業の受けとめ方の違い|shinshinohara

    とヨーロッパでは、有機農業への受け止め方が全然違うように思う。日では、有機は健康によい、というイメージが先行。けれどヨーロッパは環境に悪影響が少ない、という理由で推進されている。 これは風土と歴史の違いによるのかもしれない。 日は雨が多い。たいがいのものは洗い流されてしまう。広島は原爆のため、爆心地は向こう10年、草も生えないだろうと言われていたのに、翌年には生えてきた。雨が土を洗い流したからかもしれない。公害も、有害物質の排出止めたら大幅改善。化学農薬の効き目も比較的早くに失われる。 他方、ヨーロッパは大陸性の気候で、雨が比較的少ない。産業革命で石炭焚くと酸性雨が降り、多くの森林が失われ、なかなか回復しなかった。第一次、第二次大戦で化学兵器が使われると、非常に長い間汚染されたままだった。化学農薬もよく効く。いったん環境を汚染すると回復しづらいらしい。 ヨーロッパでは、次世代になる

    有機農業の受けとめ方の違い|shinshinohara
  • 「科学的に証明された」考|shinshinohara

    いまでも時々、新聞やSNSで見かけることがある。けれど「証明」ができるのは数学くらいで、自然現象を相手にする実験科学や観察科学では「証明」がムリ。せいぜい「強く示唆される」、「妥当と思われる」という表現がせいぜい。 自然現象を扱う科学(数学除く)の場合、どんな理論にも「反証可能性」を示す必要がある。「こうした証拠(反証)が示されたら、この理論が間違っていたと認めます」という弱点を、自らさらけ出すというもの。見方を変えれば、どんな理論もいつかは覆る宿命であることを認めるのが科学の理論。 絶対正しい、どんな反証を示されても理論の誤りを認めない、という頑迷な理論、傲慢な理論は科学たり得ない、というのが、ポパーの提案。これは妥当だと思う。たとえば「宇宙人はいる」という主張は、反証しようがない。いるかもしれないが、いないとは証明できない。宇宙をくまなく調査は不可能。 こうした、反証しようがない主張は

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  • 単純作業は創意工夫の小宇宙|shinshinohara

    ストッキングの袋詰めを内職に出すことに。まずは一箱どのくらい手間がかかるか調べなくては。両親二人で三時間。ということは、一人だと一箱六時間かかる。それを参考に、一箱あたりの内職代を決めた。案の定、慣れてきた人でも四時間を切ることはできなかった。ところが。 一人だけ、1時間程で一箱仕上げてくる人がいた。そのことを他の内職の人に言うと、皆、信じられない、友達に手伝ってもらっているに違いない、という。 ところがとうとうその人は1時間を切って持ってくるように。人に聞くと、一人でやってるという。一度、目の前でやってみてほしいと頼んだ。 「うちのテーブルと少しすべりが違うけど」と言いながら、袋の束ををトントンとテーブルの上で叩くと、前に放り投げた。マジシャンのトランプのように、均等に袋がズレて並んだ。まずこれにビックリ。すると今度はストッキングを雑然と山にした。「きちんと並べなくていいんですか?」と

    単純作業は創意工夫の小宇宙|shinshinohara
  • 創造性を奪う競争的資金|shinshinohara

    大型予算の研究プロジェクトになると、研究の進行を監督し、アドバイスする人を配置する。そのアドバイザーになったことがある。 そのプロジェクトは、早い時点で計画が破綻していた。そのためか、全員が頭真っ白になっていることがよくわかった。もうどうしたらよいかわからない。 申請書には開発不可能とされた技術をいかに開発するか、見事な実験計画が描かれていた。しかし早い段階で「考えていた方法では開発は無理」なことが明確になった。何せ、計画には、自分たちが最善と思った方法を列挙してある。それがうまくいかなかったら、もうそれ以上アイデアがなかった。 みなさんの発表を見てると、計画に書いた方法から大してはみ出てない実験ばかり。もはやうまくいく方法を探すというより、三年間ももらえてしまう予算に見合うだけの実験はしましたよ、という言い訳をするための実験ばかり。「こんなにたくさん実験しましたけどダメでした」と、許して

    創造性を奪う競争的資金|shinshinohara
  • 全体を見渡し、欠落を見つけ、それを補おうする力|shinshinohara

    阪神大震災のとき、現役京大生が救援物資の在庫管理を担当。すべての物資の種類、数を把握し、1500名いる被災者の消費量を計算してどの物資がどのくらい不足するかを予測し、ボランティアに的確に指示を出すので「歩くコンピューター」と呼ばれ、被災者の子どもたちに人気だった。 しかし1500人もの人たちを支える救援物資の膨大さ、しかも全国から送られる救援物資は、ダンボール箱を開けてみないと入数と種類も分からない。種類ごとに分別もしなきゃいけない。あまりの過労でぶっ倒れてしまった。 新しい物資担当は、左官の若者(その京大生と同じ年)。 「とてもじゃないけどあの人のマネはできません。僕のやり方でやらせてもらっていいですか?」 人がいなくて代わりはいない。みんな、彼にお任せすることにした。その「やり方」は。 品物ごとに山を作った。服の山、毛布の山、ラーメンの山、ミネラルウォーターの山。面積が必要になるけれど

    全体を見渡し、欠落を見つけ、それを補おうする力|shinshinohara
  • 過去をなぞり、前提を変えてみる|shinshinohara

    私の開発した有機養液栽培はあまりに簡単すぎて、学生の中には、これが140年以上誰も成功しなかったとは信じがたく、「なんだ、そんな簡単な方法ならさっさと試しゃよかったのに」という感想を述べるのもいた。創作というのは、つべこべ言わずエイッて試しゃできるもんだ、とその学生は思ったらしい。 確かに、たった3つのコツ(水1リットルに土を10グラムほど漬ける、肥料を1グラム以下加える、二週間曝気する)だけで成功するような方法、簡単に見つけられそうな気がする。しかし、140年もの間、誰も成功しなかったのは事実。ではなぜ、うまくいくようになったのか。 「知る」と「知らない」の境界線を明確にしたからだと思う。過去の研究者が試したことを調べ上げ、まだ試されてないことは何か、明確にした。 過去の研究者は、有機肥料をたくさん加えたり、ずっと継続的に加えたりしていた。最初だけちょびっと、というのはまだ誰も試していな

    過去をなぞり、前提を変えてみる|shinshinohara
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